今年の漢字が「災」に決まった。関脇御嶽海(25=出羽海)に「今年の1字」を聞くと、10秒近く熟慮して「『魅』ですかね」と答えた。「今年は自分の魅力を存分に出せた年だったと思う。優勝も経験できたし、何も言うことないんじゃない。最後の一番とかもそうだしね」。

確かに、九州場所での千秋楽は「魅」を象徴していた。すでに負け越しが決まっている中、小結貴景勝(22=千賀ノ浦)を1差で追う大関高安(28=田子ノ浦)をすくい投げで破った。貴景勝の優勝が決まるか、優勝決定戦にもつれるか、そんな一番で1分近いせめぎ合いを制した。「最後の最後に、来年につながる相撲を取れて良かった」。満員の福岡国際センターを魅了させ、表情を和らげた。

今年は世間の厳しい目にさらされ、神経質になる部分があったかもしれない。名古屋場所では初日から11連勝と快進撃を続け、13勝で初優勝。周囲からは否応なく、秋場所での大関とりの期待が高まった。「(大関とり)は気にしていない」と繰り返したが、朝稽古では取材に応じず、付け人を通して記者にコメントを伝えることもあった。

取組では「御嶽海」と書かれたタオルが会場を埋め尽くす人気者。7月の七夕の短冊には「イケメンになりたい」と書くなど、土俵外でもファンを喜ばせる。九州場所の千秋楽を終え、支度部屋で見せた表情は気負いとは無縁だった。九州場所を制した貴景勝とは、初場所の番付で東西の関脇として肩を並べそうだ。18年の最後は話題をさらわれたが、19年はどちらが若手の筆頭と呼ばれるのだろうか。はたまた新鋭が出てくるのか。いずれにせよ、土俵外の暗い話題を拭い去る活躍に期待したい。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)