この日は平成では23回目にして最後の天覧相撲。ロイヤルシートに着席された天皇陛下は、説明役の八角理事長(元横綱北勝海)に「今日はありがとう」と切り出され、皇后陛下は「お元気でしたか」と声をかけられた。この言葉に同理事長は「頭の中が真っ白になりました」。昨年は不祥事もありご招待を取り下げ。2年の空白を皇后陛下の温かなお言葉が埋めてくれた。さらに両陛下の、関心の高さをうかがわせる質問に驚いた。「与之吉さんは大丈夫ですか?」。神経疾患のギラン・バレー症候群で5場所連続休場し、昨年11月の九州場所で復帰した幕内格行司の式守与之吉の病状さえも把握されていた。

御嶽海や鶴竜ら休場中の力士のケガを案じ、外国人力士の出身地も熟知され、一番一番に拍手を送られた両陛下。元横綱稀勢の里の荒磯親方についても「今後はどうするのですか」「お元気ですか」と興味を示され同理事長から「今年中に断髪式をして(将来的に)部屋を興すと思います」と説明された。結びのふれで立行司の式守伊之助が敬語を使う意味で「この相撲一番にて本日の結びにござります」と発した。藤島審判長(元大関武双山)は「感激しながらやらせていただいた」と感無量の様子。江戸時代に徳川将軍が観戦した上覧相撲が始まりとされ、昭和天皇は51回のご観覧があった天覧相撲。新元号になっても国技大相撲には、切っても切り離せない行事として存続するだろう。

式守与之吉 えっ! 陛下が気にしてくださったんですか? ありがたいです。びっくりですね。光栄で…、今日は眠れないですよ。

八角理事長(元横綱北勝海) (両陛下は)ひじょうに楽しまれていた感じを受けました。力士のケガ、健康面を心配してくださるのは本当にありがたい。来ていただいて本当に感謝しています。力士は緊張からか熱戦よりアッサリした相撲が多かった。

式守与之吉
式守与之吉