今場所の幕下上位は、兄弟力士に注目が集まった。十両貴源治の双子の兄で、東3枚目貴ノ富士(21=千賀ノ浦)は貴公俊のしこ名を改名。すでに勝ち越しを決め、再十両も視野に入ってきた。7戦全勝で幕下優勝を果たした西3枚目若元春(25)は、荒汐部屋「大波3兄弟」の次男。新十両は確実で、来場所は三男の弟、十両若隆景との兄弟関取が誕生しそうだ。

その中でも大成道(26=木瀬)は、特別な思いを抱いて今場所に臨んだ。東の筆頭で勝ち越しを決めて、来場所の関取復帰は濃厚。「兄が最後だったので…。花道を添えてあげたかった」。3学年上の兄、笹山(29)は今場所限りで引退。兄は3年前に幕下の中腹まで番付を上げたが、関取の夢はかなわなかった。「相撲を始めた時も、相撲界に入った時も、常に兄の背中を追っていました。入門した時も、仕事を丁寧に教えてくれて…」。小学校1年生の時、相撲道場に誘ってくれたのは兄。高校も入門部屋も兄を追った。だからこそ、半年前に引退の意向を聞いて「関取として送り出したい」と、結果で感謝を示したかった。兄は今後、都内で地元、青森の郷土料理を扱う飲食店で働く。「これからも兄と地元を盛り上げたい」。角界を離れても、兄弟の絆はつながっている。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)