結びの一番を終えた後、懐かしい光景が飛び込んできた。大きな弓を巧みに操り、堂々と四股を踏む。弓取り式を行うのは、東序二段45枚目の聡ノ富士(44=伊勢ケ浜)だ。初日に弓取り式を行った西幕下22枚目将豊竜が初日の取組で肩を負傷。代役が回ってきた。「年も年なので見せられる体ではないけど、何とかやっています」と笑った。

弓取り式を行う聡ノ富士(撮影・河野匠)
弓取り式を行う聡ノ富士(撮影・河野匠)

18年初場所以来3年8カ月ぶりの弓取り式。自身の持つ弓取り力士の最高齢記録(戦後)を更新した。この日、自身の取組が終わったのは午前10時半過ぎごろ。コロナ禍の感染対策により自由な外出ができないため、弓取り式が行われる午後6時までは「支度部屋でぼーっとしてるだけ。それもつらいですよ」と苦笑。また、感染対策で歓声がなく「やっぱり『よいしょ』がないとね。拍手だけだと物足りないかな」と率直な胸の内を明かした。

とはいえ、今場所は弟弟子の照ノ富士の新横綱場所。「うれしいですね。近くで頑張っているのを見ていましたから」と感慨にふけった。かつては日馬富士の横綱時代にも行っていた。2人の弟弟子の横綱が現役の時に弓取り式を行うことになり「またできるとは思わなかった。代役でも任された限りは最後までやる」と言葉に力を込めた。【佐々木隆史】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)