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父亀田史郎氏手記 カリスマ誕生

ランダエダに判定勝ちし朝青龍に抱き上げられガッツポーズの亀田
ランダエダに判定勝ちし朝青龍に抱き上げられガッツポーズの亀田

<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級王座決定戦12回戦>◇2日◇横浜アリーナ◇1万5000人

 興毅、よう頑張った! 亀田の苦闘を制した王座奪取に、トレーナーの父史郎氏(41)も号泣した。1回終了間際にダウンを喫するまさかの展開。史郎氏は声を張り上げ、コーナーに戻ると亀田にビンタをかまして鼓舞し続けた。試合後は亀田と泣きながら抱き合い、ベルトを巻いた息子を肩車した。「3兄弟を世界王者にする」親父(おやじ)の夢の始まり。史郎氏は激闘、亀田の歴史を語る手記を日刊スポーツに寄せた。

 泣いてもうたな…。興毅の気持ちがうれしかった。亀田家を背負って、ベルトを取りにいったんやからな。ごっついプレッシャーや。それに初めての階級で体重もきつかったんかもしれん。力出されへんかったしな。それでも、根性でもぎ取ってくれた。ボクシングの内容はあかんでもな、その気持ちが伝わってきたからうれしかったんや。

 いきなりのダウンでオレ、頭真っ白になった。でも、逃げるわけにはいかんやん。倒しにいかなあかんやん。オレができるんは掛け声しかない。声を出しすぎて途中で頭の線が切れそうになった。足もフラフラになった。途中で嫌になったぐらい。でも逃げ出されへんやん。興毅が必死に頑張ってんねんから。家族みんなで必死に戦ったから、最後に神様がごほうびをくれたんやと思う。

 こう見えてオレ、緊張しいやし、考えるタイプなんや。興毅が生まれるときもな、初めての子供やし、予定日が近づいてくると悪いことばかり考えた。ちゃんと生まれてくるんか、何か病気持ってるんとちゃうんか。そんなことばかり考えてたら頭の左側がツルツルにハゲてもうた。医者に行ったらな、神経使いすぎやって。ハゲ薬塗りたくってな。無事に生まれてくれと毎日、祈ってたよ。

 興毅がデビューした後も試合の前の日はいつも胃がパンクしそうになる。胃がキリキリ痛んでな、ウェッと吐いてまうんや。医者に行って検査したら「胃かいようの1歩手前です」と言われた。この世界戦も、めっちゃ緊張したよ。でも前の日の夜に興毅と話した。「家族でやってきたことを思い出して、勝つしかないやんか」って。それでオレも腹をくくった感じになった。

 小さいときは、泣き虫であかんたれやったけどな。5歳のときな、幼稚園の運動会で興毅より体が2倍ぐらいあるやつに、オレらが見てる前で蹴られよったんや。興毅は走って逃げた。「また逃げんのか!」や。「また」というのは、何回もやられてるということやん。興毅は「親父に見られた」って、家に帰ってシュン太郎や。「やり返さんかい」って行かせたよ。最初に興毅の友達が向かっていったら、一撃でやられた。それで興毅の目の色が変わったな。そのでっかいやつをパンチ一発で泣かしよった。それからやな、興毅が自分の殻を破ったんは。

 興毅はまじめや。恥ずかしがり屋ねん。でも、オレの言うことだけは何でもやった。「親父、何したらええ」と今でも聞いてくるよ。それだけ頼られたら、オレも頑張らなあかんやん。3人に「頑張ってたら神様はちゃんとおるよ」といつも言うてる。天才なんかおらんよ。努力や。「イチローになれ」って言うだけじゃあかん。ずっと一緒におって努力を見守ってやらなあかん。ボクシングでメシ食えるかなんて分からんかったよ。でもオレは近所から「アホちゃうか」と嫌われても、3人を世界王者にすると信じてやってきた。

 その夢が1つかなったんやからな。今日は喜ぼうや。興毅はまだ19歳。やらなあかん材料も分かったし、修羅場をくぐってきたやつが強なる。興毅の3階級制覇、3兄弟世界王者へのスタート。これからやな。 亀田 史郎

[2006年8月3日9時43分 紙面から]

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