1日に就任したW-1の高木三四郎・最高経営責任者(CEO=45)は、同じプロレス団体DDTの社長も務める業界では異例の“二重国籍”経営者だ。プロレス界のスーパースター、武藤敬司が経営の立て直しを託した男は、弱小団体を18年でメジャーに匹敵する人気団体に育て上げたアイデアマンでもある。現役プロレスラーでもある人間・高木に迫った。

 高木CEOは午前10時から午後2時までW-1事務所で働き、その後はDDTで仕事をする。W-1では経営の立て直しのため、支出の見直しを進めている。例えば、リングや照明、音響機器、移動用のバスなどリースでまかなっていたものを今後は自前で購入予定。「初期投資だけであとはずっとタダになる。これまでは、興行をやるたびに外部発注で収支がマイナスになっていた」と説明する。

 プロレス団体経営のノウハウは、DDTで学んできた。設立当初は100人、200人の会場すら満員にできなかった。しかし、今や後楽園や、両国国技館を常時満員にできるほどの人気団体に育て上げた。イケメンレスラー飯伏幸太や、男色ディーノなどおかまレスラーも登場。女性は半分以上という会場は、笑いと熱気にあふれている。

 宝塚やジャニーズからファンパワーの原動力は女性ということを学び、SNSを通しての情報発信でファンを獲得。プロレス界初のレディースシートを導入し、AKBに倣いDDT総選挙も毎年実施するなど高木が目指す「カジュアルなプロレス」がファンに浸透している。

 駒大時代にイベントの運営を手がけ、卒業後は横浜市鶴見区内の屋台村プロレスに参加。96年には衆院選に出馬(落選)したこともある。その翌年、NOSAWA論外に誘われDDTを設立した。「プロレス界の中では底辺から上を目指してきた。今回、まさかこんな話があるとは夢にも思わなかった。W-1を盛り上げていきたい」と楽しそうに話した。【桝田朗】

 ◆高木三四郎(たかぎ・さんしろう)本名高木規。1970年(昭45)生まれ。大阪府豊中市出身。駒大卒業後、97年にDDTプロレスの旗揚げに参加。06年1月に社長争奪ロイヤルランブルを制し社長に就任。昨年、DDTの新人育成団体DNAを設立。社長のかたわら現役として年間100試合をこなす。家族は夫人と娘2人。