井上尚弥の弟で東洋太平洋スーパーフライ級王者井上拓真(20=大橋)が、同級1位レネ・ダッケル(24=フィリピン)を3-0の判定で破って初防衛に成功した。最終ラウンドにダウンを奪って見せ場を作ったが、単調な攻めに、自己採点は「倒そうとしすぎて練習してきたことを全然出せなかった。内容的にはもう…10点ですね」と激辛。仕留めきれなかった自分への怒りで笑顔はなかった。

 7月、同級王座決定戦に勝利。兄と同じ5戦目で東洋王座を奪取も、プロ初となるダウンを奪われるなど、不満が残った。兄からは「足を使いすぎ。もっとプレスをかけたりしないと」とダメだしされた。悔しさを晴らすべく「いろんなリードジャブを練習してきた」。しかし、力みから多彩な攻撃は影を潜めた。

 それでも、26日に20歳の誕生日を迎えたばかり。デビュー2戦目で世界上位ランカー、4戦目には世界戦経験者と拳を交えた。日本人初となる2戦目での世界ランク「WBAライトフライ級9位」入りも達成。大橋会長はかねて「来年中には確実に世界をやらせる」と明言。「練習から、いろんな形で攻めていかないと」。課題と向き合いながら年を越し、兄の背中を追いかける。【亀山泰宏】

 ◆井上拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日、神奈川・座間市生まれ。兄尚弥の影響を受け、小学1年から本格的にボクシングを始める。アマ戦績は52勝(14RSC)5敗。13年12月に大橋ジムからプロデビュー。162センチの右ボクサーファイター。家族は両親と姉、兄。