スーパー王者内山高志(36=ワタナベ)が、まさかのプロ初黒星で6年3カ月君臨してきた王座からKO負けで陥落した。

 ボクシングに絶対はない。衝撃的なKO負けとなったが、その伏線はあった。

 内山は、スロースターターでサウスポーが苦手。初回は様子見がセオリーだ。しかしコラレスは、リードの右腕を下げた攻撃的なスタイルで前に出た。特に危険だったのが、左のロングアッパーだ。フルスイングしてヒットしなかったが、当たれば必倒のタイミングだった。さらに小刻みなステップは、立ち上がりの内山にはとらえにくい。ラウンドの最後には左フックを被弾して動きが止まった。

 2回に浴びた最初のダウンは致命的なものだった。内山は右→右のパンチで前に出た。上体が前のめりになったアゴに、左フックをカウンターで浴びた。ボクシングでは見えない角度から食らうパンチが最も効く。コラレスはサウスポーだが、両足がそろったような体勢からワイルドに左右フックを打つのもセオリーに反したもの。内山にとっては、軌道を予想しにくいトリッキーで速いパンチだった。

 徐々に距離をつめる内山が、やや強引に距離をつめたことが勝敗を分けた。名王者が陥落する際、早い回のKO負けは珍しい光景とはいえない。軽量級ではない、スーバーフェザー級(58・9キロ)で立ち上がりに痛烈なダウンを食らえば、どんな選手でも立て直すのは難しい。