スーパー王者内山高志(36=ワタナベ)が、まさかのプロ26戦目の初黒星で、6年3カ月守った王座から陥落した。12度目の防衛をかけ、暫定王者ジェスレル・コラレス(24=パナマ)と対戦。圧倒的有利が予想されていたが、2回に3度のダウンを奪われ、2分59秒、KOで敗れた。進退については明言を避けた。内山の戦績は、24勝(20KO)1敗1分けとなった。

 内山が負けた。2回1分10秒すぎ、変則的にパンチを放ってくるコラレスにカウンターの左を合わされ、腰から崩れた。「見えなかった」。13年大みそかのV8戦以来のダウン。どうにか立ち上がるも、足もとが揺らぐ。勢いづく相手の連打を浴び、中盤には今度は前のめりに倒れた。ラウンド終了を願うファンの声もむなしく、残り1秒、ロープ際で左をもらいキャンバスに沈んだ。

 6年3カ月。誰よりも長くベルトを守ってきた王者のまさかの姿に、会場は異様なざわめきに包まれた。唇をかみしめるように控室に戻ると「最初のダウンで、その後のパンチに反応できなかった。2回目の後は落ち着いてきたが、入れ返したいと思い、もう1発もらってしまった。調子は良かった。これが実力。完全なKO負けです」と淡々と振り返った。渡辺会長の姿を確認すると「すみません」と頭を下げた。

 内山は敗因を精神面に求める声を否定したが、簡単な試合ではなかった。昨年末のV11戦後、前WBAフェザー級王者ウォータースら世界的な強豪との米国での対戦交渉が進んだ。かねてビッグマッチを待望してきた内山も「今回は」と思いを膨らませた。だが、合意寸前で立ち消えとなり、国内でのコラレス戦に落ち着いた。「モチベーションが下がった部分はある」。3月の試合発表会見で思わず本音を漏らすほど、心は乱れた。

 36歳。陣営は契約上、再戦の可能性もあるとしたが、内山は「今は何とも言えない。まだ何も考えられない」と話すにとどめ、進退について明言を避けた。渡辺会長は「信じられない結果になってしまい残念。内山本人ではなく、周りに油断があった。今思えば反省はある」と悔やんだ。ジム初の世界王者となった愛弟子には「まずは休むことだが、今後は本人次第。こういう選手とはもう巡り合えないと思う」とも言った。

 アマ時代から活躍も、拓大卒業後は1度はボクシングから離れた。それでもプロで戦う後輩の姿に刺激を受け、25歳でプロ入り。徹底した肉体管理と節制で夢をつかむと、圧倒的な強打でKOの山を築き、歴代2位の11度の防衛を重ねてきた。16年初戦。まさかの結末が待っていた。【奥山将志】