IBF世界ライトフライ級王者八重樫東(33=大橋)が、濃密トレーニングの成果と拓大の先輩、内山高志の敗戦を教訓に初防衛を狙う。同級10位マルティン・テクアペトラ(メキシコ)戦に向け、4月30日に横浜市内のジムで練習を公開。朝には最後となる週1回の階段トレーニングも終えた。前回の防衛戦から練習メニューを見直し、今回は負荷を増して鍛えてきた。内山の王座陥落にあらためて気を引き締め、格下相手にも万全を期す。

 八重樫は公開練習で珍しくスパーリングをしなかった。サンドバッグやミット打ちと通常のジムワークだけ。この朝には土曜日恒例でメインとなる、ハードなトレーニングをこなした。

 横浜市内の4カ所ある神社や公園の階段上り。最長253段をダッシュしたり、1段飛ばしで上る。多い時は30本。元世界王者内藤の地獄トレでも有名。野木丈司トレーナーによる白井具志堅ジムの下半身強化のメニューだ。八重樫もお願いして加えてもらった。

 フィジカルトレーニングも前回から変えた。バーベルや器具を使って筋肉を鍛える。以前はジム会員だった和田良覚氏から月、木曜の週2回、指導を受けている。体脂肪率22%でCMにも登場した大相撲の妙義龍も通う。八重樫は今回、重量や回数で負荷を増やし、さらに鍛え上げてきた。

 スパーリングは世界戦経験のある日本フライ級王者粉川らと週3回こなした。最近は休むことも心掛けながら中身の濃いルーティンの1週間。それも今週ですべてを打ち上げた。「前回の延長線上でコツコツ積み上げるだけ。少しでも強くなるため。順調だが成果は結果がすべて」と冷静だ。

 挑戦者がランク10位の下位とあって楽勝の声もあるが、いつになく緊張感を漂わせる。「ボクはいつもギリギリの勝負」。拓大の先輩で、世界王者、人として尊敬する内山が、4月27日の防衛戦でまさかのKO負けを喫した。「何があるか分からない。あらためて思うところはある。言葉はいらない。後輩が頑張っている姿を見てもらえれば」。

 怖さを再確認させられ、大橋会長は「プレッシャーになる。顔つきが変わった」と言う。「最後までコンディションを作ってリングに上がり、自分らしい試合をしたい」。日本のジムから4人目の3階級制覇にもおごりなく、最後の最後まで油断せずに王座を守り抜くつもりだ。【河合香】