「米国にいる全てのイスラム教徒を鼓舞した」。3日に74歳で死去したボクシング元世界ヘビー級チャンピオン、ムハマド・アリ氏のイスラム教にのっとった葬儀が9日、出身地の米南部ケンタッキー州ルイビルで営まれ、参列したイスラム教徒ら数千人が、アリ氏が残した功績をたたえた。

 アリ氏の遺体が入ったひつぎがゆっくりと運ばれると、集まった参列者らは静かに祈りをささげ、最後の別れを告げた。トルコのエルドアン大統領や、ボクシング世界5階級制覇で知られるシュガー・レイ・レナード氏ら著名人も参列した。

 キリスト教徒で黒人差別撤廃の公民権運動の指導者ジェシー・ジャクソン師は、アリ氏はチャンピオンとしてよりも、人権活動家として語り継がれると指摘し「リングの中でも外でも闘いをやめなかった」と称賛した。

 10日午前には遺体を乗せた車列が市街地を巡回し、多くの市民が沿道で追悼する。同午後(日本時間11日未明)には追悼式典が開かれ、ビル・クリントン元大統領らが弔辞を送る。

 ルイビルに住むソマリア系米国人の高校教師ハムザ・ハムザさん(61)は「イスラム教徒を勇気づけ少数派の権利のため闘ったチャンピオン。われわれイスラム教徒のお手本だ」と語った。

 オバマ大統領はフェイスブックで9日公表した動画で、アリ氏にもらった本とグローブを見せ「彼は比類なき存在だった。グレーテスト(最も偉大)であり続けるだろう」と述べた。

 アリ氏は引退後、パーキンソン病で長い闘病生活を送り、敗血症性ショックのため死去した。