女子レスリング界のレジェンド山本美憂(42)が、総合格闘技デビュー戦でRENA(25)に敗れた。山本はタックルでRENAを倒すなど、積極的な攻めを見せた。しかし、一瞬のスキを突かれ肩固めで逆転負け。先に、総合格闘技2戦目で勝利した長男・山本アーセン(20)と史上初の母子同時出場は、明暗が分かれた。

 タックルを仕掛け、RENAの上に乗った。山本が優位に見えた。しかし、頭の中は混乱していた。下になったRENAの蹴りがアゴにヒット。集中力を欠いた瞬間、下からガッチリ首を固められていた。息が苦しくなって思わずタップ。夢に見た総合格闘技デビュー戦は、悔しい一本負けに終わった。

 「悔しいですね。デビュー戦は絶対勝つつもりでした。でも、下からの蹴りで集中力がどこかにいっちゃった。総合格闘技の洗礼を受けちゃいました」。試合が終わった2時間後、悔しさをかみ殺すように話した。6月に総合転向が決まり3カ月。急ピッチの練習も、総合2戦目のRENAにわずかに及ばなかった。

 試合後、リング上で全選手があいさつした。山本は、デビュー2戦目で初勝利を挙げた息子のアーセンに背中をさすられ、慰められていた。「ママ、大丈夫。強かったし、いい試合だった。オレも最初は負けたし」。長男の言葉を聞いて、気持ちを立て直した。「負けて終わるわけにはいかない。火がつきました」。

 五輪をあきらめ、総合の世界に飛び込んだのは、新しい自分の可能性を見つけるためだ。その過程の中で、アーセンと一緒に練習する幸せも味わった。「五輪に出ていたら今の幸せはない」。そして、女子レスリングの草創期の開拓者となったように、総合格闘技の開拓者になると心に決めている。「RIZINを続けて、将来は(国籍を取得した)カナダにRIZINカナダ本部を作る」。新たな夢に向かって山本はスタートを切った。【桝田朗】