ボクシングの大橋ジムは12日、前東洋太平洋スーパーフライ級王者井上拓真(20=大橋)が練習中に右拳を負傷し、王者マーロン・タパレス(フィリピン)に挑む12月30日のWBO世界バンタム級タイトル戦(有明コロシアム)出場を取りやめると発表した。大橋会長は「脱臼に近い症状で、近日中に手術を受けます」と説明した。

 悲劇が襲ったのは、9日だった。4度目の防衛戦を行うWBO世界スーパーフライ級王者の兄尚弥(23)とともに、年末の世界戦の発表会見に出席。「しっかり勝って、小さい頃からの夢である兄弟で世界王者になりたい」と意気込みを語ったその日だった。スパーリングの初回に、パンチを打った際に痛みを覚えた。

 高校3年だった13年にプロデビュー後、兄の背中を追い、世界の頂点に立った兄に並ぶために、地道な努力を重ねてきた。5戦目に東洋太平洋スーパーフライ級王座に就くと、8戦目となった9月の世界前哨戦も突破し、無敗のまま順調に世界戦へ歩を進めていた。

 兄弟のトレーナーを務める父真吾さんは、拓真について「同じ年齢の時の尚弥より強い」と話す。まだ20歳と若いだけに、まずはケガの治療に専念し、来年以降の世界取りへと仕切り直すことになる。