ランドセルを児童養護施設や学校に贈る「タイガーマスク運動」の先駆けとなった「伊達直人」こと群馬県前橋市在住の河村正剛(まさたけ)氏(43=会社員)が7日、東京・後楽園ホールで行われた初代タイガーマスク佐山聡のプロレス団体、リアルジャパンプロレスのイベント「初代タイガーマスク35周年記念大会」に参加し、リング上で素顔を公表した。

 リング上で子供たちの支援を続ける熱い思いを訴えた後、大量の報道陣が待つ控室で取材を受けた。

 -なぜ子供たちの支援を始めたのか

 河村氏 僕の幼少期の経験から。その経験をプラスに考えて、子供たちに返そうと思った。子供たちを支援しようと思って、東京に出てきた時に実行した。

 -どのような幼少期だったのか

 河村氏 家庭には恵まれなかった。自分が感じた思い、それをプラスに転じるように考え直して、自分の過去は振り返っても取り戻せないけど、子供たちの未来なら変えられるだろうと。自分の昨日より、子供たちの明日だ。

 -なぜランドセルを寄付しようと思ったのか

 河村氏 自分が小学校に上がった時、ランドセルがなかった。タイガーマスク運動の象徴がランドセルになっているが、何が大事かというと、子供たちは施設に好きで入って暮らしているわけではない。それが大前提。その中でおいしい物を食べて、ランドセルをもらって、洋服を着て、学校に行きたいわけではなく、一番子供たちが願っているのは、良い形で親御さんたちの元に帰ること。それで僕は、19年前に初めて施設を伺った時に、ランドセルを持って行った。その数年後ぐらいに、職員さんとの話の中で、親御さんたちは施設からの支援物資に頼ってしまって、親が怠けている。親たちが感謝しない。それで僕は、考え方を変えて、『施設に遊びに来てくれる人が、お子さんのために、ランドセルを持ってくるけど、どうしますか』と親御さんに投げかけてもらうようにした。そうすると、親御さんが『施設で買うんじゃないの』と。職員さんは『違います。施設に遊びに来てくれるお兄ちゃんが買ってくれる。どうしますか、お父さん、お母さん』と問いかけてもらうようにした。そうすると、親御さんの中で、『それだったら自分が買うよ』と改心した親御さんがいた。そういうのが続いた中で、子供を引き取って、家庭に戻ったというケースがあった。そのためのランドセル。親御さんの自覚。もう1度考え直してもらう。子供たちは、あなたたちが育てるんだよと。親御さんの元で暮らして、ありがとうと言いたいんだよと。それを促すためのランドセルです。

 -ランドセルの費用はどうしたのか

 河村氏 自分のポケットマネーです。僕の19年間の活動は、すべて自費です。

 -なぜこのタイミングで本名や顔を公表したのか

 河村氏 そもそも僕自身の行動は、すべて実名、顔出し。基本的には匿名でやっていない。今までは個人で活動をしてきて、タイガーマスク基金に参加させていただいて、成人式の支援とか、広義な形で支援に参加してきました。子供たちは、施設にいる間は、衣食住は守られている。高校を卒業して、社会に出た後は、支援が完全に途絶える。自立支援とか、自分の私財をなげうってやってらっしゃる方もしますけど、まだまだケアする場所が足りません。個人や企業の支援だけでなく、行政の力も必要。僕がこうやって公に出ることによって、もちろん、賛否両論あると思いますけど、それでも、僕が注目されることによって、児童養護、社会的養護についてあらためて認識してもらう。個人、企業、行政の支援につなげていきたい。社会的養護の拡充。それが僕の最大の目的です。