ボクシングのWBC世界バンタム級王者山中慎介(34=帝拳)が、“聖地”でダブル王手を決める。挑戦者に同級9位カルロス・カールソン(26=メキシコ)を迎える12度目の防衛戦の発表会見が23日に都内で開かれた。会場は過去3戦3勝3KOと好相性の両国国技館。稀勢の里の優勝で沸いた相撲の聖地で防衛すれば、13度連続の日本記録に王手。さらに国内ジム所属王者として世界戦9回目のKO勝利ならば、同じく日本記録にあと1つに迫る。

 左の拳は最大長所にして絶対的な自信。山中は、よどみなく言った。「まったく左は衰えは感じないし、次の試合も見せられると思います」。強敵をキャンバスにはわせ続け、防衛も12度目に。「12までくるとよく分からないですね」と首をかしげながらも、言うことははっきり。「よりインパクトのある倒し方で、KO決着で終わらせたい」。

 それが両国国技館であるなら、なおさら。「過去全部KOですよね」。10年10月のノンタイトル戦が9回終了TKO、13年4月のV3戦が12回TKO、同11月のV5戦が9回KOと連なる。今回はさらに発奮要素も。昨年7月に亡くなった元横綱千代の富士の先代九重親方とも親交があった相撲好きで、初場所の稀勢の里優勝は当然気に留め、「盛り上がっているので、その流れに乗りたい。盛り上げたい」。会場を沸かせる使命感がたぎる。

 カールソンは22連勝中と勢いに乗る右のファイターだが、「ブンブン振ってきても逃げる気はない。スリリングになる」と迎撃意欲満々。防衛なら具志堅用高の持つ連続13度に迫る。さらに「神の左」で倒しきれば世界戦のKO数は9回となり、内山高志の持つ日本記録10回も視界に捉える。V12戦をつなげば、V13戦は2つの日本一を狙う絶好機となる。

 会見の席上、日本プロボクシング協会の渡辺会長は言った。「無事これ名馬、です。年2、3回とコンスタントに試合をやってきた。具志堅さんの記録や、世界統一戦へ日本のエースとして頑張ってほしい」。くしくも「無事~」とは入門から約15年で休場1回の稀勢の里に重なる言い回し。拳闘界の「名馬」が、先頭へと駆ける。【阿部健吾】