WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が同級2位リカルド・ロドリゲス(27=米国)を3回1分8秒KOで下し、5度目の防衛に成功した。

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 何げない一言にそのアスリートの強さの源を感じることがある。井上の場合は、1つの提案だった。

 「じゃーんけーん…、いや、待った。やっぱ勝ちがすごいし、目指しているから、勝った人にしよう」

 2月の熱海合宿。弟拓真、いとこの浩樹と砂浜や坂道、階段などの瞬発系トレーニングで体をいじめ抜いたが、ここでのやりとりが興味深かった。メニューによっては、3人でじゃんけんをして、その回数や時間に差をつけていたのだが…。「負けはダメでしょ」。井上の一言で、いわゆる「罰ゲーム」として一番負荷が多いのは、じゃんけんで勝った人になった。

 結果、井上が勝ち、「うわっ」と顔をしかめながらも、もん絶しながらメニューを繰り返す。そんな日常の一コマから「怪物」の勝負への根っからのこだわりが見て取れた。【ボクシング担当=阿部健吾】