流れを変えたのは、村田への世界的な高評価だった。王座決定戦では元世界王者エンダムを追い詰めた。パンチスピードでも相手を上回り、4回には強烈な右ストレートでダウンも奪った。手数の優劣をみた判定に初黒星となったが、キャリア13戦目ながら、その実力は十分にミドル級の最前線を張れると証明した。

 同会長のもとには、試合直後に「参戦要請」が届いた。「WBC、WBOの会長から次はうちでやってくれと言われている」。負けて評判を高め、世界タイトル戦の可能性を広げた。WBAはメンドサ会長が誤りを認め、直接再戦を提示するが、「再戦はその(選択肢の)中の1つ」とした。

 国内でも機運は急激に高まる。村田の不遇を嘆く声は高まり続け、再チャンスを期待する。試合を放送したフジテレビは関東地区で17・8%、瞬間最高は23・2%(ビデオリサーチ調べ)と高視聴率を記録したと発表。関心の高さが証明され、テレビ局なども支援に前向きとみられる。

 村田はこの日、都内の帝拳ジムに家族とあいさつに訪れた。世論の高まりは「当事者は分からないもの」としながらも、「経験できないことを経験でき、成長になる。味わい深い人生ですね」と笑顔。世界レベルで戦える自信も深めた。今後について、「ロンドン五輪の時は『もういいや』と思いましたが、今回はそうは思わないですね」と続行に前向きな姿勢をみせた。

 方向性が決まるのは、同会長と話し合ってからになる。村田は「(決断が)長くなると迷惑がかかる。良いタイミングで」と見通した。【阿部健吾】