WBC世界バンタム級王者の山中慎介(34=帝拳)が金字塔を前にして散った。挑戦者で同級1位ルイス・ネリ(22=メキシコ)に4回2分29秒、TKO負けでプロ初黒星を喫し、世界戦連続防衛は12回でストップ。具志堅用高が80年に樹立した13回の日本記録に並ぶことはできなかった。

 世界タイトル13連続防衛の日本記録を持つ白井・具志堅スポーツの具志堅用高会長(62)が、敗れた山中をたたえた。この日はテレビ中継のゲストでリングサイド観戦。「(13連続防衛まで)あと1つでしたからね~。試合前の控室で『先輩、しっかり見ていてください』と言ってくれた。ボクシングを始めた京都で散った。私も(14度目の防衛戦で故郷の)沖縄で終わった」と残念がった。

 ただ、敗戦の中にも山中の良さがあったと強調した。「ネリのあの重いパンチでダウンしなかった。彼の素晴らしさです。私生活から計算して最高の状態に仕上げる。今の若い子にはない、人間性ですよ」と話した。

 自分同様、2桁を超える連続防衛を重ねた末の敗戦だ。「男らしいよね。強い相手と戦い続けてきた」。山中の今後については「本人次第だけど、きっと僕と同じで精神的にドーンとどん底まで落ちる。しばらくは考えられないでしょう」と心中を思いやった。「ただ、彼の左ストレートはまだNO・1。衰えていない。いつでも使える。あとは気持ちですね。下からはい上がっていけるかだけど、彼は強い人間。できないことはないと思いますよ」とエールを送った。【加藤裕一】