55年目の名門ヨネクラジムが有終の美を飾った。

 今月で閉鎖するヨネクラジム所属選手として、溜田剛士(23)がラストファイトに臨んだ。

 小坂烈(19=真正)に初回から攻勢で、右ストレートでダウンさせるもこれはスリップ。3回には伸びのある左ストレートを顔面に決めてダウンを奪った。相手は立ち上がってきたがインターバルで棄権を申し出て、3回終了TKO勝ちした。

 試合後にはヨネクラジムの関係者10人がリングに上がった。ジム閉鎖の区切りとして、異例の10カウントのゴングが鳴らされた。ジム出身の元世界王者の1人で、溜田の移籍先でもある大橋ジムの大橋会長が代表して「世界、東洋、日本、新人王を数知れず輩出してきた。みんながファミリー。ヨネクラ魂を引き継いでいきます」とあいさつした。

 溜田にはかつてない重圧があった。2連敗中で「勝ち方も忘れていた」という。さらにジムのラストファイトに「不安いっぱいだった」。控室でも重圧をかけられた。大橋会長が勝敗で2つのあいさつを用意したと聞こえてしまった。「怖くてしょうがなかった。最初は硬かった」というが、試合は「思い通り。最後の左も練習してきたのが出せた」と笑みを見せた。

 ジムのセコンドは黄色いポロシャツがお決まり。そこに1人赤いTシャツの大橋会長もセコンド入りした。「大先輩ですごいメンバー。10カウントは何とも言えない気持ちだったが、先輩たちが積み上げてきて、最後に勝ててよかった」と胸をなで下ろした。

 24歳以下のユースで国内未公認も、ヨネクラジムにとっては37人目の王者になる。延べでは世界5人、東洋太平洋9人、日本31人。ベルトの数では53本目になる。米倉会長は那須で療養中で溜田は3月から会っていない。「ベルトを持って報告に行きます。会長からいつも言われた限りなき前進をしていきたい」。

 すでに7月には大橋ジムの寮に引っ越した。今回初めてスパーリングで5日間通い、さまざまな面で意識改革もできた。「強い人から技術も盗んで、一緒に強くなりたい。最後には世界を取りたい」と誓った。