ボクシングのWBA世界ミドル級タイトルマッチは22日に両国国技館でゴングが鳴る。挑戦者で同級1位村田諒太(31=帝拳)は都内で20日、王者アッサン・エンダム(フランス)と調印式と会見に臨んだ。5月の王座決定戦では、1-2の判定負けが批判を呼び、誤審を認めたWBA会長の指令による異例の直接再戦。審判団には経験豊富な一流たちがそろった。村田が契約するトップランク社CEOの大物プロモーター、ボブ・アラム氏(85)は、王者になれば米国で試合を組む意向を示した。

 壇上から左右を見渡しながら、村田は言った。「小さい頃から夢見ていた世界。うれしく思う」。隣には50年以上も本場米国ボクシング界に君臨するアラム氏。リングアナウンサーを務める殿堂入りのジミー・レノン・ジュニア氏。会見に並んだ「顔役」に、幼少期から海外ボクシングに夢中になった村田の心は躍った。そして、何よりも審判団も一流ぞろいだった。

 立会人を務めるのはWBAの実質的NO・2、選手権委員会委員長のマルティネス氏。5月の第1戦でエンダムを支持した2人のジャッジに6カ月の資格停止処分を下した経緯もある。「僅差だった前回の試合の映像は何回も見直して今回に臨んでいる」と述べた。

 同じ過ちは繰り返せない。用意したのは実績十分の面々だった。レフェリーには「世紀の一戦」15年5月の3団体統一王座戦メイウェザー対パッキャオを裁いたベイレス氏を起用。ジャッジには日本での経験も豊富なプラヤドサブ氏、ホイル氏、カイズ・ジュニア氏を選出。カイズ・ジュニア氏は第1戦で村田を支持したカイズ氏の息子にあたる。うち2人は他団体のジャッジも兼任しており、23日からのWBO総会に出席するため米国に急いで戻るという。強行軍を覚悟でWBAが選んだのは、正確な判定のためだろう。

 村田は言う。「得たいものはベルト。まずベルトを取って、そこから始まるストーリーというのがある」。春の大一番より、さらに「夢見た世界」に近づいた雪辱舞台。「日曜日、必ず勝ちます。それだけです」。毅然(きぜん)と誓った。【阿部健吾】