男子柔道66キロ級で04年のアテネ五輪、08年北京五輪と2連覇を達成し、準強姦(ごうかん)罪で5年の実刑となった内柴正人(39)が、柔術で格闘家デビューした。アマチュア柔術の大会マスタークラス(30~35歳)のミドル級と無差別級に出場。5試合すべてで一本勝ちし、2冠を達成した。9月中旬に出所し、格闘家として再出発した。

 新たなスタートでも内柴は、金メダルを2つ取った。157センチ、70キロの体で、82キロ以下のミドル級と、無差別級に出場。ミドル級の第1試合からオール一本勝ちで、2階級を制した。「面白かった。僕にはこれしかできないから。できることをやらせてもらっています」と笑顔を見せた。

 五輪連覇を達成し、指導者の道を歩んできたが、教え子へのわいせつ事件で転落。11年12月に逮捕され、14年4月に5年の実刑が確定した。刑務所で約6年を過ごし、9月15日に出所。将来を見いだせずにいた内柴に助け舟を出したのが、総合格闘技イベント「REAL」を運営する山田重孝氏だった。

 山田氏と面会を重ね、出所後は柔術に取り組むことを決意。熊本で知人の経営する会社に就職しつつ、山田氏のもとへ練習に通った。「いろんな意見がある中で、人前に出て戦うことを選んだ。働いてお金を稼ぐことも大事だが、僕は生きがいを大事にしたい」と話した。今後は、山田氏の力を借りながら、柔術、プロのレスリング、アブダビコンバットなどアマ格闘技界で世界一を目指していく。【桝田朗】

 ◆内柴正人(うちしば・まさと)1978年(昭53)6月17日生まれ、熊本県出身。9歳で柔道を始め、国士舘高-国士舘大-旭化成。04年アテネ五輪で66キロ級で金メダルを獲得。続く08年北京五輪も同階級で金メダルを獲得し連覇。10年10月に現役を引退し、11年1月に九州看護福祉大の客員教授に就任。同年11月に部員への行為が判明。同12月に準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された。9月15日に出所したが、刑期満了は12月14日。