王者拳四朗(26=BMB)が前王者で同級1位のガニガン・ロペス(37=メキシコ)を破り、3度目の防衛に成功した。

 2回1分45秒すぎ、強烈な右パンチを相手ボディーに叩き込むと、ロペスはたまらず前のめりにダウン。2回1分58秒、この一撃であっさりと勝負を決めた。

 拳四朗は「最初1ラウンドは緊張してドキドキでした。自分の距離が取れていたので、いけるかなと思った」と喜びのコメント。ボディー一撃で仕留めたことを問われると「昨日の夜ごはんの時に(父がボディーへのパンチを)ワーワーしゃべっていて、それでいけるとは…。倒せてよかった」と満面の笑みを浮かべた。

 1年ぶりの再戦は、王者と挑戦者という「立ち位置」が逆になったリマッチだった。王座奪取へと攻める挑戦者に対し、王者はベルトを守る意識が高まる。立場の変化がプラスに働くのか、それともマイナスに動くのか-。笑顔がトレードマークの拳四朗は、ロペスの迎撃を前向きにとらえた。「2回目なので今度はしっかりと倒していきたい。今回は倒します」。V2王者らしく、揺るぎない自信をみなぎせリングに立った。

 1度は拳を交えたベテランのサウスポー。戦いにくい相手であることを身を持って知っているだけでも、精神的なアドバンテージがある。1年前は12回判定で2-0の僅差判定で王座を奪った。WBC独自の公開採点で劣勢を知ったロペスに後半追い上げられた展開でもあった。王座奪回に執念を燃やすであろう11歳年上のロペスに対し「距離感が独特でやりにくい相手だけど、序盤から積極的に攻めて下がらせたい」との戦略を口にしていた。

 もともと4月15日、WBA世界ミドル級王者村田諒太、前WBC世界フライ級王者比嘉大吾とのトリプル世界戦で行われる予定だった一戦だ。両陣営の了承を受けた主催者サイドの日程再調整で約1カ月ほどスライドし、3階級制覇に挑む井上尚弥(25=大橋)とのダブル世界戦になった。結果的に、前回のロペス戦では見送られた地上波での試合生中継が実現することになった。「KO勝利して、もっと有名になる」との宣言を後押しする環境が整った。自然と気持ちも高揚していた。

 前回の試合間隔は2カ月だったが、今回は5カ月弱と十分すぎる調整期間もあった。既に2月上旬、三迫ジム勢と一緒に神奈川・茅ケ崎で3泊4日に合宿を消化した。砂浜での計90キロ以上のロードワークで強靱(きょうじん)な下半身をつくりあげてきた。3月上旬に1週間、そして4月下旬から5月上旬までフィリピン遠征を敢行し、実戦トレーニングにも着手してきた。サウスポー対策を練りながらのスパーリング合宿には十分な手応えがあった。

 「サウスポーには距離の長い左ジャブをいかに当てるかがポイント」と師匠である父の寺地永会長は指摘する。その上で「前回のロペス戦は初の世界挑戦で十分な力を出せずにギリギリの勝利だった。1度戦っているので、今回は(ロペスの動きを)読みやすい。前回、最後の打ち合いは打ち負かした。あの後半に見せた打ち合いを早いラウンドで出せれば」と早期のKO勝ちまで予想していた。

 この1年間、ロペス戦を含めて3度の世界戦を経験した。拳四朗は「防衛ごとに自信はついている。8回ぐらいに倒したい」とKO勝利に意欲的だ。今や勝利後も決めポーズとなりつつある、両手でのピースサインをリング上で再び披露することを意識しながら、リターンマッチを締めくくった。