挑戦者の同級1位田中恒成(23=畑中)が王者木村翔(29=青木)を2-0の判定で破り、WBOミニマム級、同ライトフライ級を含む世界3階級制覇を達成した。

国内ジム所属選手ではWBAバンタム級王者井上尚弥以来7人目、プロ12戦目での達成はWBAライト級王者ロマチェンコに並ぶ世界最速の快挙となった。

「目の前の木村チャンピオンの気持ちの強さに触発されました。気持ちと気持ちの勝負だと思っていたので、弱気になったら負けだと思っていた。気持ちの強いチャンピオンで、一生忘れられない試合になりました。(3階級制覇は)うれしいです」。

「この1カ月は、今までで一番頑張ったという自信があります」。田中は23日の前日計量後、そう言い切った。強靱(きょうじん)なタフネス、メンタルが際立つ王者を最強の敵と認めた。

世界戦3戦連続KO勝ちという木村のブルファイトは、いかにスピードがあっても全部さばききれない-。打たれても、勝つ。求めたのは“根性”だった。 7月31日の世界戦発表会見で、木村戦に向けた調整ポイントを「一番嫌な練習をすること」と話した。嫌なことは、走ること。8月中旬から4度、畑中会長らが現役時代に訪れた名古屋市内の通称“チャンピオンロード”大高緑地公園で走った。1周約4キロのロングランを2本、目の前に立つと「壁」(田中)に見える、150メートルの坂道をダッシュで5本。9月は他の場所の急坂、階段がある場所に出向き走った。本番10日前までランニングメニューを組み込む調整だった。スパーリングの回数を減らしてまで心を鍛えた。

原点回帰も図った。16年大みそか、ライトフライのベルトを奪って2階級制覇を成して以降、漂い始めた油断。田中の思い、考えが最優先され、周りが物を言いにくくなった。危機感を覚えた陣営は畑中会長、田中の父斉トレーナー(51)、フィジカル担当の河合貞利トレーナー(44)が定期的に話し合いを持つようになり“田中主導”の体制を、従来のチーム恒成に戻し、3階級制覇に挑み、この日成果を出した。