WBC世界スーパーバンタム級2位の亀田和毅(27=協栄)が13年12月以来、約5年ぶりの国内世界戦で、同級1位のアビゲイル・メディナ(30=スペイン)に12回3-0で判定勝ちし、13年8月に獲得したWBOバンタム級王座に続く、史上初の3兄弟2階級制覇を達成した。

和毅は亀田家の大黒柱として、この日のリングに立っていた。次兄大毅氏(29)は、15年11月に左目の網膜剥離で現役を引退。長兄の興毅トレーナー(31)も、試合2日前の10日にブログで「私、亀田興毅は現役を退き、プロボクサーを引退することにしました」と引退を表明した。15年10月16日(日本時間17日)に米シカゴで4階級制覇を目指し、WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平に挑戦も判定負け後に引退を表明し、5月5日に1試合限定で復帰し引退試合をしてから2度目の引退表明だった。

2人の兄はもうリングに上がることはない。文字通り亀田家最後のとりでだった。和毅は13年8月に獲得したWBOバンタム級王座戦を振り返りつつ「初挑戦はすごい重圧だった。今回は経験も自信もある。亀田家を背負っていく」と自身の成長と亀田家を背負う覚悟を口にしていた。

そんな和毅の姿に、興毅氏も亀田家の未来を託す覚悟を決めていた。「新しい夢ができました。夢というより元より強く思っていた事。それが弟・亀田和毅が再び世界チャンピオンになる事。3兄弟でそろって二階級制覇という大記録を達成する事です。実力、センス、努力。どこをとっても亀田和毅にはその可能性は十分にある。しかしここまで試合を実現するのが遠くなってしまったのは俺の責任でもあるし、だからこそ総力を上げて応援したい。今は和毅のためであれば何でもやりたいと思う」とブログに思いをつづった。

和毅は、そんな長兄が「世界ボクシングタイトルを獲得したもっとも多い兄弟」「メジャー・ボクシング・タイトルを同時に獲得している最も多くの兄弟」に続く3つ目のギネス記録申請を狙った、史上初となる3兄弟2階級制覇を達成し、その期待に応えた。

和毅にとって、4度目で国内で初の世界挑戦で、世界戦は5年ぶり2度目だった。16年に再起から5試合目になる。世界上位ランクを維持も、以前のような資金力、交渉力はない。チャンスを待ち続けるしかなかった。「ずっと応援してくれた人に日本で王座に返り咲いて恩返ししたかった」願いもかなえた。

兄譲りのフィジカルトレの成果も発揮した。プロ野球日本ハムにも在籍した多田久剛氏に指導を受けた。「体幹を通して、地球のエネルギーを下半身から上半身に伝える」。腹筋だけで1日5種類に強化メニュー9種類。負荷を増やしながら3セットこなす。走り込みも毎日メニューを変えた。

起床後、就寝前に30分のストレッチを欠かさない。このまじめさで週2日を3カ月で、スクワットやベンチプレスの負荷は20キロアップ。元々「3兄弟で才能は1番」と言われる。メキシコで単身修行に耐え、スピードとテクニックを身につけた。そこに「弱点」と言えたパワーをアップさせた。体に芯ができ、パンチだけなく、バランス、防御の対応にも効果があった。

実は興毅トレーナーが、5月の引退試合前に実践したトレーニングだった。「いい実験になった。おやじの根性論に最先端トレの合体。今回はお試しでまだ30%伸びる。ピークは30歳」とさらに期待する。

今回は陣営のチームウエアに始まり、ガウン、トランクスにシューズも白地にした。「おしゃれに」と言ったが「もちろん白星に新たな出発」の意味を込めていた。

王者レイ・バルガス(メキシコ)が肩の故障で手術のために設定された暫定王座戦だった。来年の初防衛戦では王座統一戦となる予定。「いつかは井上尚弥ともやってみたい」。新たな野望へ向けて亀田一家が再スタートを切った。