業界の雄が満を持して再始動した。新日本プロレスが15日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で止まっていた試合を、無観客で110日ぶりに行った。3カ月半も試合が空いたのは団体史上初めて。全6試合34選手が、久々のリングの上で躍動した。

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この日の試合前、“100年に一人の逸材”棚橋弘至(43)は本隊選手とリングに上がり、あいさつした。

「新日本プロレスが帰ってきました。待っていてくれたファンの皆さまありがとうございます。無観客の形ですが、またいつか皆さまと会場で会える日を夢見て、1歩ずつ頑張っていきます。今日は画面の向こうから声援を送ってください。よろしくお願いします」。棚橋ら選手の表情は喜びにあふれていた。

新日本プロレスは新型コロナウイルス感染拡大を受け、2月26日の沖縄大会を最後に53大会を中止。約3カ月半ぶりにようやく迎えた試合再開だった。会場は非公開で、試合は有料の動画サービス「新日本プロレスワールド」で配信。声援は聞こえない。それでも選手らは中止前と変わらぬコンディションで試合に臨み、熱い試合を画面の向こうに届けた。メインはIWGPヘビー、同インターコンチネンタルの2冠王者内藤哲也(37)と前王者オカダ・カズチカ(32)が対する6人タッグ戦。内藤は鷹木、ヒロムと鮮やかな連係をみせ、最後はYOHにデスティーノで勝利。喉をからしながら勝利のデ・ハ・ポンコールをさけび、「みなさんとできることを楽しみにしてます」とファンとの大合唱を約束した。

109日も試合を中断したのは感染防止、会場の問題、企業の社会的責任を果たすため。世界から注目される団体として、安全に試合ができるまで我慢を続けた。5月25日に関東圏などで緊急事態宣言が解除されたことを受け、全選手、一部スタッフに抗体検査を実施。健康状態をチェックする態勢を整え、再開にこぎつけた。試合を見届けたオーナーの木谷高明氏は「いつ再開するか焦ったと思う。世界中で一番準備をして再開した団体」と現場をたたえた。

この日も選手、試合の合間にリングを消毒し、選手の囲み取材は行わないなど、入念な予防がなされた。コロナと闘いつつ、再スタートを切った。【高場泉穂】