IWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟(38)が棚橋弘至(44)の挑戦を退け、初防衛に成功した。必殺技を何度も返されたが、最後はパンピングボンバーで右腕を振り抜き、ラスト・オブ・ザ・ドラゴンで粘る棚橋を沈めた。

本来挑戦する予定だった飯伏が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で欠場となり、前日にアピールしていた棚橋の出場が、この日の午前10時に急きょ決まった。鷹木の有利かと思われたが、中盤は棚橋の怒濤(どとう)の攻撃に苦しんだ。飯伏の思いを乗せたカミゴェを食らい、ハイフライフローで押さえ込まれたが、本能だけで返し、勝利につなげた。前回の対戦となった、今年1月のNEVER無差別級選手権試合では敗れ、ベルトを奪われていた。「さすがエース。これで1勝1敗だ。またやろう。ある意味本当の勝者はあんたかもな」。引き揚げる棚橋に声をかけた。

18年に新日本に加入してから、目標だった東京ドームのメイン。飯伏が欠場することになっても「メインのタイトルマッチは必ずやる」と主張した。13年1月の東京ドーム大会はスタンドで観戦。その時のメインは棚橋-オカダのIWGPヘビー級選手権試合だった。今年、オカダを破り、あこがれだったこの場所で棚橋と対戦。広い会場いっぱいに声を響かせ、観衆を引きつけた。

欠場となった飯伏は、試合前にSNSで「鷹木さんに申し訳ない。もし、次戦戦えることがあったら100%でやらせて欲しい」とつづっていた。同い年の戦友の気持ちを察し「あいつなりにギリギリまでドクターと相談して苦渋の決断をした。その気持ちだけで十分」と思いやった。さらに「飯伏が来るまで負けられない」と再戦の日までベルトを守り続けることを誓った。次期挑戦者には「次はこの俺だ」とEVILが表明。場内暗転後に襲撃され、後味の悪い結果となったが「お前とやってやるよ」と堂々と受けて立った。

緊急事態宣言下ながら、約5000人の観客が集まった。「家で東京五輪を見ていてもいい中、プロレスを選んでくれたことに感謝する」と感謝。「俺たちの世代がまだまだプロレスを引っ張っていかないといけない。世界中のてっぺん目指して龍のごとく上っていくぞ」。39歳の元気はつらつオジサン。東京五輪に負けないくらいにプロレス界を盛り上げる。【松熊洋介】