67歳の藤波辰爾が、98年の新日本IWGPヘビー級以来となるシングルのベルトを手にした。ヒートアップの「ユニバーサル&PWLWORLDCHANPIONSHIP」2冠王者のTAMURAからコブラツイストでギブアップを奪い、タイトルを奪取した。勝利後、帰ろうとするTAMURAを呼び止め「(デビュー)50周年の年にこんなビッグなプレゼントがあるとは。若いころを思い出させてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えた。

15分を戦い抜き、疲れ切った67歳には、久しぶりの2冠ベルトを抱え上げるのも一苦労だった。息子でプロレスラーのLEONAから腰に巻かれ、もう1つを肩にかけたが、わずか数分ほどで下ろす場面も。「本当に重かったんだよ」と苦笑いした。

23年ぶりのシングル戴冠。シングルタイトルマッチへの挑戦も、01年の全日本3冠ヘビー級王座戦で武藤敬司に敗れて以来20年ぶりだった。近年はタッグでの試合が多く「シングルマッチに少し(気持ちが)引いた部分があった」という中で、TAMURAの挑戦を受けた。「ベルトは重いもの。簡単には答えられない」といったんは保留したが、その後快諾。「50年経っても飽きないんだな」と貪欲にベルトを追い求めた。

闘志みなぎるTAMURAの姿を見て、88年にIWGPヘビー級王者として、アントニオ猪木氏の挑戦を受け、引き分けた試合を思い出した。「あの時とは立場が逆だが、捨て身で向かってきた猪木さんのシーンが浮かんだ」。右足を集中して攻められ、劣勢の展開が続いたが、すべて受け止め、立ち上がった。バックブリーカーでTAMURAの腰を破壊し、ドラゴンスクリュー、ドラゴンスリーパーなど得意技を次々と決め、勝利をつかんだ。

「彼がチャンスをくれた。これからも期待に応えないと。このベルトに色を付けて恩返ししたい」と次なる防衛にも意欲を見せた。5月にデビュー50周年を迎え、今月14日にはプロレス殿堂入りを果たした藤波。久しぶりのシングルのベルトを腰に巻き、来月末から始まる50周年ツアーに向かう。【松熊洋介】