ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)がタイ人挑戦者の“嫌な”イメージを払拭(ふっしょく)するKO撃破を狙う。14日、東京・両国国技館でIBF同級5位アラン・ディパエン(30=タイ)との防衛戦(WBA6度目、IBF4度目)を控え、2日に最終調整。過去2度の世界戦で倒すまでに10回以上を必要としたタイ人挑戦者を完膚なきまでに倒す姿勢を見せた。

妥協がない、井上らしいマイナスイメージ払拭へのこだわりだった。過去の防衛戦では、タイ人挑戦者は今回のディパエン戦で3人目だが、過去2戦は10回以降の撃破と倒すまでに長い回数を要していた。減量苦や負傷など試合ごとの状況の違いはあるが、過去の戦績を振り返りながら、こう言った。

「データ的にはそういうものが残っているので、自分的には気にしていなくても、どこかにちょっと(頭に)残ったりしている」

もともとタイ人ボクサーには「我慢強い」という印象がある。ここを完膚なきまでに倒すことが、自らの成長度を確認することにもつながる。「ディパエンのどこを気をつけるというか、というより自分自身に気をつけないと。相手の『ここ』という警戒点はないですが、今の自分を把握して理解する。コンディション、気持ちを含めて自分が一番理解する必要がある」と意図を口にした。

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の世界的な拡大による水際対策の強化で新規入国が原則禁止になる前に挑戦者は来日した。フィギュアスケートのGPファイナルの中止も発表される中、井上は防衛戦開催を感謝しながら、あらためて気を引き締めた。 「感染者が減っていますが、まず対戦相手が無事に来日したことを無駄にしないよう残りの日々は感染に気をつけたい。これで前日に陽性になったら…気を抜きたくない。中止になる緊張感は常にある」

タイ人挑戦者とともに、コロナウイルス感染にも細心の注意を払いながら、井上が最終調整に入った。【藤中栄二】

<井上VSタイ人の世界戦VTR>

◆14年9月、サマートレック・ゴーキャットジム戦(WBC世界ライトフライ級王座の初防衛戦=11回TKO勝ち)減量苦の同階級で、井上はファイター型のサマートレックに序盤からプレッシャーをかけた。4回に右強打でダウン奪取。6回に左ボディーでダウンを追加。7回以降、挑戦者の反撃があったものの、井上は11回にボディー攻めで追い込み、レフェリーストップのTKO勝ち。

◆16年9月、ペッチバンボーン・ゴーキャットジム戦(WBO世界スーパーフライ級王座のV3戦=10回KO勝ち)ワンツー、左ボディーを打った井上は、ひるまない挑戦者に右ストレート、ワンツーを打ち込みながらもダウンを奪えない。8回以降、右拳を痛めて左拳中心の展開に変更。10回に右拳を使い、ワンツーで反撃し、ダウンを奪ってKO勝利を収めた。

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