●2002年4月18日付の日刊スポーツから●

 総合格闘技のPRIDEが、バルセロナ五輪柔道78キロ級金メダリスト吉田秀彦(32=新日鉄)獲得に乗り出すことが17日、明らかになった。PRIDEを主催するDSE(ドリーム・ステージ・エンターテインメント)森下直人社長(42)がこの日、全日本選手権(29日、東京・日本武道館)を最後に柔道界引退を宣言した吉田に対し、「プロ転向を条件に交渉を開始したい」と明言した。引退後に関しては口を閉ざす吉田だが、格闘技界への関心は強く参戦決断の可能性も十分。実現すれば日本人五輪金メダリスト初のプロ転向になる。

 総合格闘技界最大のイベント「PRIDE」が、吉田獲得へ動き出すことになった。この日、吉田の柔道界からの引退を伝え聞いたDSE森下社長は「吉田さんは、PRIDEにぜひ上がってほしい人材。29日の全日本選手権終了後、正式にプロに転向したら、交渉を開始したい」と語った。エース桜庭和志がヴァンダレイ・シウバに連敗し、藤田和之もアキレスけん断裂で欠場中と、現在のPRIDEマットには日本人スターが不在。森下社長も「日本人のビッグネームがほしい」と話しているだけに、吉田獲得に真っ先に名乗りを上げた。

 ファンの絶大な支持を集め、今月28日に節目のPRIDE20(横浜アリーナ)を開催する。だが、一時低迷していたプロレス界が復調気配を見せ、総合格闘技のパイオニア、米国に本拠を置くUFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)も来春の日本再上陸を計画。群雄割拠の格闘技界に確固たる地位を築く上で、五輪金メダリストの吉田獲得は、大きな起爆剤になる。夏には桜庭、藤田が戦列に復帰する予定。これに知名度抜群の吉田が加われば、過去最大のビッグイベント開催も可能になる。

 もちろん交渉開始は全日本選手権終了後になる。吉田は現在、柔道選手としての集大成になる全日本一本に集中しており、引退後のプランに関しては一切口を閉ざしている。だが、01年2月にプロレスのFMWに突然乱入するなど、格闘技好きとして有名で、周囲には「自分がやったことが見えるような仕事をしたい」とも話している。関係者によるとプロレス以上に総合格闘技に興味を示しているとされ、第2の人生の舞台としてPRIDEを選択する可能性は十分ある。

 日本ではバルセロナ五輪柔道銀メダルの小川直也が97年にプロ格闘界に転じたが、金メダリストのプロ転向は過去に例がない。吉田がPRIDE参戦を決断すれば、格闘技界のイメージ、知名度アップは図り知れない。吉田はすでに勤務先の新日鉄に辞表を提出。明大柔道部の監督も勇退の方向で、引退後は文字通りゼロからの再出発になる。PRIDEマットでは、実力次第で億単位の高額なファイトマネーを得ることも可能。経済的基盤を築き、たぐいまれな才能を発揮する場として、PRIDE参戦も一つの手段。吉田の動向から目が離せなくなった。