<WAVE>◇30日◇後楽園ホール◇観衆1443人

 植松寿絵(38)の引退試合は“満足な不完全燃焼”だった。名タッグ「植松☆輝」の盟友・輝優優(36)とのタッグで、愛弟子の渋谷シュウ(32)春日萌花(27)組と対戦。若手のスピードのある攻撃に押し込まれる場面もあったが、春日が右ひじを脱臼するアクシデントもあり、最後は圧倒した。リングは降りるが、今後はコーチとして弟子2人をトップレスラーに育てることを誓った。この日はWAVEとして3度目の後楽園大会だったが、団体新記録の1443人の観衆を集めた。

 プロレス界の未来を弟子たちに託すため指名した試合だった。植松の期待に応えるように、若い2人はスピードのある攻撃でベテラン組を苦しめた。盟友の輝が相手組の連続ミサイルキックを6連発で浴びる場面もあった。連係面でも成長を見せつけられた。

 だが、ハッピーエンドはアクシデントに崩された。春日が試合中に右ひじを脱臼。治療して最後までリングに立ったが、戦力ダウンは隠せなかった。孤軍奮闘する渋谷を、輝との合体技「ハイアングル植松」(輝の方の上から飛ぶボディープレス)、月面水爆で追い込む。最後は飛龍原爆固めで3カウントを奪った。

 18年間の現役生活最後の試合は不完全燃焼だった。植松は弟子たちを責めることもなければ、かばうこともなかった。

 植松

 これからも「お前の気にかけたヤツを、これからも責任を持って教えていけ」って意味なのでしょう。ケガをするのも運命、シブ(渋谷)が頑張れたのも運命。悔いが残るけど、満足な試合でした。これからも私が教えられる限り教えます。親が子どもを投げ出すことはありません。

 母親の気持ちで若手選手を指導してきた植松。彼女にも「プロレス界の母」がいた。GAEAの新人時代から指導を受けたKAORU(43=フリー)。決して優等生ではなかった植松の相談や愚痴を受け止めてくれた。引退試合の相手と心に決めていたが、相手が右かかとの粉砕骨折などで、試合ができる状態ではなく、あきらめた。この日の試合中に出した月面水爆はKAORUの得意技。試合前に「南側スタンドの上で見ていて」と予告した感謝のメッセージだった。

 引退後もスタッフとして団体に残り、指導を続ける。先輩たちから受け継いだ女子プロレスの魂を伝え、新生させる「プロレスの母」として、業界を支えるつもりだ。