<プロボクシング:WBA&WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇31日◇大阪・ボディメーカーコロシアム

 WBA同級10位の天笠尚(29=山上)は、同級統一王者のギジェルモ・リゴンドー(34=キューバ)の前に壮絶に散った。

 天笠は、世界に敵なしと言われたリゴンドーに勇気を持って攻めた。1回から力の違いはあったが、ひるむところを見せなかった。7回は振り下ろすような右ストレートで絶対王者からダウンを奪った。なおも襲いかかり2度目のダウンを取った際、奇跡を予感させた。

 しかし、2度の五輪で金メダルに輝いたリゴンドーの底力はさすがだった。10回に強烈な右フックを見舞われた天笠の左ほおがみるみる腫れ上がった。11回を何とか戦い終えた天笠に山上会長が「もういいだろう」と終了を告げた。「やつは1度も試合中、泣きを入れなかったよ。見上げた根性だ」。会長は絶賛した。

 天笠は「敗者は何も語れない」と多くは語らずリングを下りた。左ほおの骨折の疑いで大阪市内の病院に向かった。挑戦者の背中に多くのファンが「ナイスファイト、ありがとう」の言葉をかけた。「勝つ確率3%」と言った天笠が、大みそかの夜に感動のファイトを見せた。