<プロボクシング:東洋太平洋、日本フェザー級ダブルタイトルマッチ12回戦>◇5日・東京・JCBホール

 史上初の高校6冠ボクサーで日本フェザー級王者の粟生隆寛(24=帝拳)が、無念の引き分けで、世界挑戦権獲得はならなかった。東洋太平洋同級王者の榎洋之(28=角海老宝石)とダブルタイトルを懸けて対戦。互いに譲らず、3人のジャッジともドロー判定に終わった。勝利を信じた粟生は試合後、号泣して悔しさをあらわにした。両者とも3度目のタイトル防衛となった。

 涙が止まらなかった。榎との無敗同士の日本人頂上決戦。粟生はドロー判定の結果を必死で受け入れようとしたが、無理だった。「納得はしてない。少なくとも3ポイントはリードしていた」。試合直後、陣営に両サイドを抱えられ、おえつを漏らしながら医務室に向かった。

 序盤は粟生が右ジャブと得意の左ストレートを的確に当て、ペースを握った。後半は榎に左ジャブでの追い上げを許したものの、最終的には試合を支配した自負があった。「(榎の)ジャブはかすっただけだし、右は1発しかもらってない。効いたパンチもなかった」。採点のアナウンスを聞くまで、勝利を信じ切っていた。

 ジャッジは115-115が1人、114-114が2人だった。粟生はヒットアンドアウェーで、確実にポイントを稼いだつもりだった。だが、ジャッジは榎の左ジャブ、前に出る姿勢をより評価していた。粟生は「これが日本のスタイル。(自分のような)アウトボクサーは有利ではない」とうなだれた。

 「真の日本一決定」は持ち越された。完全決着への期待は高まるが、両陣営とも再戦には否定的。榎は年内の世界挑戦を見据え、粟生も今回の悔しさを糧に、来年以降の世界挑戦を目指す。本田会長は「オレも本人も勝ったと思っているが、潜在能力の60%しか発揮していない」と攻撃面などの課題を挙げた。粟生も「攻撃のバリエーションを増やしたい」と言って、涙をふいた。【田口潤】