現役助産師の女子プロボクサー、富樫直美(32=ワタナベ)が、日本ボクシングコミッション(JBC)公認後、初の世界王者を狙う。WBC世界ライトフライ級暫定王座決定戦(13日、韓国・京畿道)に向けて10日、出発する。普段は都内総合病院の産婦人科勤務で助産師を務めながら、厳しい練習を続ける。過去300人以上の子供を取り上げた腕で、世界王座もつかみ取るつもりだ。

 子供を取り上げる腕が、夜になると「武器」に変わる。出発前夜の最終調整を終えた富樫は「悔いのない準備はできた」と覚悟を決めた。韓国のキム・ジン(24)との世界暫定王座決定戦に向け、10日、敵地に乗り込む。

 助産師学校時代の27歳の時、ダイエット目的でボクシングを始めた。兄の影響で子供のころから興味があったため、ジムに通うごとにのめり込んだ。3年後には全日本アマチュア女子大会で優勝するまで成長。JBCの女子公認を機にプロ転向を決めた。

 助産師になって6年。約300人以上の子どもを取り上げたが、両立は簡単ではない。普段は3交代制で都内の産婦人科医に勤務。夜勤の日は午後11時から翌朝の午前8時半まで働く。午前11時から午後4時まで仮眠を取った後、午後8時から練習。息抜きは睡眠だけの日々も「新しい命の誕生という、人の幸せを応援できる仕事が好きなんです」と二足のわらじを苦にしたことはない。

 「マラソンの高橋尚子さん、最近ではテニスのクルム伊達公子さんに勇気をもらった。自分も誰かの励みになりたい」。子どもの誕生という喜びに貢献してきた富樫が、女子初の世界王座奪取で、働く女性にエールを送る。【田口潤】