WBC世界フェザー級9位の粟生隆寛(24=帝拳)が、元WBA世界フライ級王者の故大場政夫さん(享年23)流「不屈のスピリット」で世界の頂点を目指す。同級王者オスカー・ラリオス戦は16日、東京・代々木第1体育館でゴングが鳴る。15日の前日計量はともにパスした。父広幸さん(49)の影響で、「伝説の王者」といわれるジムの大先輩の試合ビデオを見て、自伝も読んできた。故大場さんのような粘りと闘志を持って、激闘が予想される夢の世界初挑戦の舞台に立つ。

 強気な言葉がポンポンと飛び出した。計量後、粟生は7歳上の王者を見下すように言った。ラリオスの体を見て「上半身は大きいが、下半身はめちゃ細い。押し合いでは負けない」。表情についても「肌に張りとつやがない。(減量が)厳しかったのでしょう」と止まらない。その姿はめっぽう負けん気が強かった同門の先輩王者に重なった。

 元WBA世界フライ級王者の故大場政夫さんの大ファンだった父広幸さんの影響で、小学生のころから、大場さんのビデオを見てきた。自伝も読んだ。72年6月のアモレス戦、73年1月のチャチャイ戦など、倒されても、果敢に打ち合って逆転KOする姿に感動した。「劣勢に立たされても最後まであきらめない姿勢を学んだ」。2年前、日本プロボクシング協会が出した「大場-粟生」の仮想対決のカレンダーは今でも実家に掛けてある。

 強豪王者ラリオスに、故大場さんから学んだ「不屈のスピリット」で立ち向かう。粟生の4倍以上のキャリアを持ち、2階級を制覇した王者には、今までのようにセンスだけでは勝てない。王座をもぎとるために真っ向から打ち合う覚悟だ。「明日は死に物狂いでタイトルを取ります」。腕が折れても、拳をつぶしても、腰が折れても、最後には自分が勝つ決意だった。

 史上初の高校6冠、プロでも昨年3月、日本王座を獲得。数々の修羅場をくぐり抜け、高校1年から8年間負けなし。何度も大舞台を経験した男は、世界戦前も「まったく普通の日。特に高ぶりはないです」と平常心も失わない。「明日の夜には、ぼくの腰にベルトがあります」。強気な姿勢は最後まで揺るぎなかった。【田口潤】