北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストの石井慧(21=国士舘大)が、総合格闘技の世界制覇を宣言した。3日、大阪市内のホテルで会見し、正式にプロ転向を表明。日本の総合格闘技団体はもちろん、米国のUFCまで視野に入れ「世界王者だけではなく、強いと言われる選手全員に勝ちたい」と発言。総合格闘技界の「60億分の1の男」を目指す。また注目の大みそかのDynamite!!には出場せず、来年から本格参戦することを示唆した。

 石井の表情に迷いはなかった。「総合格闘技に転向することになりました。今日からはプロとしていきます」。続けて、世界中の総合格闘技の猛者たちに挑戦状をたたきつけた。「その時の王者に勝っただけでは1番とかじゃないと思うし、強いと言われる選手全員に勝っての王者だと思う。全員にどんな試合でも勝つことが『60億分の1の男』になることだと思います」。

 参戦する団体は「何も決まっていない」と話した。今後は「全方位外交」を行う。日本のDREAM、戦極の両総合格闘技団体に加え、米国のUFCについても「もちろんです」と選択肢に入れている。「一番重点を置きたいのは、自由に練習をさせてもらって、自由に動けるところ」。世界制覇の夢を実現するため、契約に縛られないことを条件として挙げた。

 プロデビューについては慎重な姿勢を貫いた。「柔道の金メダルを捨てて、白帯でやっていきたい。中途半端でやっても勝てる世界ではないので、総合格闘技に失礼のないように戦いたい」。大みそかの「Dynamite!!」(さいたまスーパーアリーナ)参戦にも「今年はない。それは確かです」と言い切った。

 既に肉体改造をスタートしている。自身より大柄な相手との対戦が多かった柔道100キロ超級時代は、食事を多めに取り、激しい筋力トレで体重を増やしたが、現在は絞っている。今後はグレイシー道場など米国での修行も視野に入れている。「打撃も一から、寝技も道着がないから大変。自分はエンターテイナーとして総合格闘技をやりたくないので、それだけの練習期間が必要」と説明した。

 柔道時代は圧倒的な練習量で頂点に上り詰めた。その基本姿勢はプロに転向しても変わらない。「努力して成功してやるんだという気持ちはすごく強い。総合格闘技で成功して、両親に良い生活を送らせてあげたい」。尊敬する格闘家は400戦無敗と言われるヒクソン・グレイシー。その域に達し、世界制覇を成し遂げるまで歩みを止めない。【菅家大輔】