<ウエルター級66・6キロ契約12回戦>◇6日(日本時間7日)◇米ネバダ州ラスベガス

 世紀の大番狂わせだ。WBC世界ライト級王者で軽量級4階級を制覇したマニー・パッキャオ(29=フィリピン)が、中量級6階級制覇王者オスカー・デラホーヤ(35=米国)に8回終了TKO勝利を収めた。夢の対決は、ふだん約60キロで戦うパッキャオが増量し、約70キロで戦うデラホーヤが減量して、ウエルター級(66・68キロ)の契約ウエートで実現。圧倒的不利が予想されたアジアの英雄が、体格のハンディを感じさせない一方的な展開で圧勝。ボクシング界の常識を覆す大波乱を起こした。

 本場ラスベガスの会場が騒然となった。8回終了間際、体格で劣るパッキャオが、デラホーヤをコーナーに追いつめた。とどめの16連発で、たまらず相手陣営は試合をストップさせた。ミニマムからヘビー級まで17階級まで細分化されたボクシング。「小よく大を制す」がありえない競技で奇跡が起きた。

 「スピードを生かせた。3回から(KOは)時間の問題と思っていた」。開始から鋭い出入りで、得意の左ストレートを的確にヒットさせた。4回にはデラホーヤの顔面は真っ赤に染まった。7回、ジャッジ3人全員が10-8の採点をつけるほど、一方的に打ち込んだ。試合後、デラホーヤを救急車で病院送りにするほどの圧勝だった。

 初めて世界王座をつかんだのはフライ級(50・8キロ)。その後、アジア人初の4階級制覇を達成した。現在保持するライト級王座のリミットは61・23キロ。元ミドル級(72・57キロ)世界王者のデラホーヤよりも約10キロも軽い。身長差は10センチ、リーチも13センチ下回る。両者歩み寄ってウエルター級のリミットでリングに上がったが、戦前の予想は圧倒的不利。「ミスマッチ」「パッキャオの冒険」と非難された。

 それでもパッキャオは「これは究極のチャレンジ」と譲らなかった。昨年までデラホーヤを指導したフレディ・ローチ氏(48)をコーチに招き、9月から米ロスで合宿。相手の弱点を突く練習を徹底した。「毎日ジムでスピード、スピードと練習をした」(パッキャオ)。成果はリングの上で出た。踏み込み、パンチの速さはもちろん、前後左右の動きで、6階級制覇王者を翻弄(ほんろう)した。

 試合後はライトヘビー級挑戦の声まで出始めた。世界主要4団体のミドル級を制覇したバーナード・ホプキンスがライトヘビー級(79・38キロ)での対戦を呼び掛けた。ボクシング界の革命児となったパッキャオの未来には夢が広がる。