WBC世界フェザー級3位粟生隆寛(24=帝拳)が、接近戦に対応するための肉体改造に成功した。12日に同級王者オスカー・ラリオス(32=メキシコ)に挑戦する粟生は9日、都内の病院でラリオスとともに予備検診を受けた。連日のトレーニングの成果が表れ、首回りが昨年10月の対戦時と比べて1・5センチも太い37センチになった。華麗な防御スタイルから、打たれても前に出る肉弾戦モードへ、変身の準備はできた。

 粟生が勝つための「首」を手に入れた。シャツに袖を通すたび、違和感を覚えていた襟周りの変化が、数字になって表れた。「鏡を見ても、あごのラインが違ってきたなと思うようになった」。座って検診を受ける王者ラリオスに、上から鋭い視線を送り続けた。たくましくなった体を誇示するようでもあった。

 昨年10月、ラリオスとの初戦で35・5センチだった首周りが、5カ月で1・5センチも増えた。ワイシャツでいえば1~2つ上のサイズの首を、体を絞り込みながらつくり上げた。前回は4回にダウンを奪いながら、判定で敗れた。王者に足を使って距離を取られた。「あと1歩が出なかった。相手を大きく見すぎた」。リスクを冒してでも踏み出せなかったことを悔いていた。

 強化といっても、特別なことはない。寝そべったり、横になって首を上下左右に動かす単純なもの。「パンチをもらわなければいい」という信念から、今までほとんど行わなかった基礎練習を、日に200回は必ず取り入れた。「パンチをもらっても効かないよう、首を強化してきました」。泥臭い肉弾戦に打って出る覚悟の表れでもあった。

 この5カ月、「攻撃重視」をテーマに取り組んできた。パンチをもらっても、前へ前へと出るつもりだ。「今はパンチをもらっても大丈夫、という自信がある。その覚悟でやらないと、(王座には)手が届かない」。強打に耐えうる体だけではない。相手の懐へ踏み込む勇気も手に入れた。【森本隆】