<プロボクシング:WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇11日◇大阪府立体育会館◇観衆3895人

 国内初の男女ダブル世界戦で、WBA世界スーパーフライ級王者名城信男(27=六島)が劇的な逆転TKO勝利を演じた。同級9位冨山浩之介(25=ワタナベ)との初防衛戦。1、6回と2度ダウンを喫したが、8回に猛ラッシュを見せて1分22秒TKO勝ち。29日予定の結婚式に自ら花を添えた。

 ここしかない。8回に訪れた千載一遇のチャンスを名城は逃さなかった。豪快な右ストレートを顔面に打ち抜き、冨山のひざを揺らす。解き放たれた獣のようにロープに追い込み、ダウンを奪取。コーナーで連打を浴びせレフェリーストップを呼び込むと、会場は熱狂の渦に包まれた。

 大苦戦の末につかんだ逆転TKO勝利。王者はリングに突っ伏して喜び、泣いた。「これで結婚できると思って…」。婚約者の山田智子さんとの挙式が29日に控えていた。前半勝負と決めていたが、重圧で体が動かない。開始わずか43秒、冨山の左フックに尻もちをつくプロ初のダウン。足のふらつきを感じながら、式のことが頭をよぎった。「(仲人の)会長にどんな顔をしたらいいのか」。

 2回から立ち直ったが、6回に再びダウンを喫した。セコンドからのゴーサインは出なかったが「ポイントでは勝てない」と覚悟し、前に出たことが奏功した。事実、7回を終えてジャッジ3者とも1点差で挑戦者を支持していた。大阪府立体育会館での世界戦KO勝利は83年10月の渡辺二郎以来26年ぶり。伝統の会場で歴史を刻んだ。

 勝ちたい理由がもう1つあった。3月、ジムの後輩の対戦相手が試合のダメージが原因で死去。名城もかつて同様の事故を経験しており、後輩の胸の内を察してショックを受けた。訃報(ふほう)を聞いた日は、涙でスパーリングにならず、予定の12回を4回で切り上げた。翌日の、藤原俊志トレーナーからの励ましのメールにも戸惑った。やっと心を切り替え「もう大丈夫です。絶対に負けません」という短い返信に気持ちを込めた。

 次戦の相手は未定だが、6月に期限が迫る指名試合が有力だ。陣営は敵地となる海外での開催も視野に入れる。「今回みたいに守りに入らず、次は挑戦者の気持ちで勝ちに行きたい」。試練を乗り越えた王者は、2年前に失敗したV2をしっかり見据えていた。【大池和幸】