<戦極:第八陣>◇2日◇東京・代々木第2体育館

 戦国武将の末裔(まつえい)が「衝撃的」な戦極デビューを飾った。かつて中国地方を治めた戦国武将毛利元就の子孫である毛利昭彦(34=毛利道場)が、真騎士戦で反則勝ちした。1回4分20秒にグラウンド状態で頭部にキックを受けてドクターストップ。自力で立てない状況でマイクを握ってコメントすると、担架で病院に運ばれた。勝つには勝ったが、毛利にとってはほろ苦い戦極デビューとなった。

 珍しい光景だった。4分すぎ、毛利は真騎士の右フックでリングに沈んだ。その瞬間、頭部を蹴り上げられた。しばしの中断後、ドクターストップとなって4分20秒で試合終了。「グラウンド状態でのサッカーボールキックによる反則」で勝利は手にした。

 ダメージが残ってリング上に倒れたままの毛利だったが「(試合が)不本意だったので、どうしてもひと言言いたかった」と、自らマイクを要求。医師の許可を得て「どうしても勝ちたかった。道場の仲間の結婚式で、勝利をプレゼントしたかった。もっと練習して戻ってきます」と、声を絞り出した。その後は戦極側が迅速に対応し、大事を取ってタンカで病院に搬送。検査結果は異常なしで、試合終了から約2時間半後に会場へ戻ってきた毛利は「ちょっと側頭部が腫れていますが大丈夫」と話した。

 毛利の先祖は「3本の矢」で有名な戦国武将毛利元就の九男、秀包(ひでかね)だ。ゆかりの品の多くは空襲で焼けてしまって残っていない。だが、先祖の「百万一心(百人の民の力を合わせれば何でもなしえるの意)」という言葉は受け継いでいた。相手の真騎士は06、07年のレスリング世界選手権ベネズエラ代表。「山口という田舎からやってきて、田舎なりにみんな力をあわせれば通じると思っている」と、地元で応援してくれている仲間の期待を背負っていた。1日には「魂のこもった戦いをします」と、闘志を燃やしていた。だが、まさかの結末が待っていた。

 戦極の國保代表取締役は「珍しい出来事でしたね」と苦笑しつつも「(毛利は)次もチャンスがあれば」と語った。毛利も「次は必ず、ちゃんとして勝ちをもぎ取りたい」と顔を上げた。“戦極”武将としてほろ苦いデビューを飾った毛利が、次の戦こそきっちりものにする。【浜本卓也】