<新日本:東京大会>◇16日◇両国国技館◇1万1000人

 真壁刀義(36)が悲願のG1クライマックス(G1)初優勝を飾った。準決勝でノアの杉浦貴(38)を破り、決勝で中邑真輔(29)を18分29秒、キングコングニーからの体固めで撃破した。デビュー12年6カ月でのG1制覇は、80年以降デビューしたレスラーとしては史上3番目の長さ。これまでIWGPヘビー級王座挑戦2度失敗、ニュージャパン杯、G1、ゼロワン「火祭り」など5度準優勝に終わっていた万年2位の男が、ようやくシングル戦での頂点に立った。

 流血の真壁が耐え忍んで栄冠をつかんだ。中邑のキックを、次々に受け続けた。腕ひしぎ逆十字をしのいだ。ランドスライドを浴びても起き上がった。後頭部へのボマイエにも屈しなかった。劣勢の中、場内の真壁コールが後押しした。16分すぎ、2度目のボマイエを両手でブロックして反撃。最後はスパイダージャーマンからのキングコングニー2連発で仕留めた。「ガキのころからレスラーを夢見てた。夢のねえ時代、今度はおれが夢を見せる番だ」とほえた。

 雑草が花咲いた。96年に新日本入り。同期は全日本学生レスリング選手権4連覇の藤田和之だった。アントニオ猪木氏の付け人で、期待された藤田に対し、真壁は帝京大プロレス同好会出身。必然的に先輩レスラーの雑用が回された。掃除、洗濯、厳しい練習。真壁は「期待されてねえ、やめてもいい存在だからしごきは半端じゃなかった。でもな、そのときしごいたやつら、いつかぶっ殺してやると心底思ってた」と耐えてきた。

 01年に約1年間の海外遠征から帰国後は、若手レスラーが台頭。05年のG1ではアキレスけんを断裂し、約40日間の入院を強いられた。「もうやめようと思った」と振り返る真壁を支えたのが、地元の友人たちだった。「入院中、見舞いにきたダチが、おれを見舞うレスラーを見て喜んでる。その姿を見てたら、こいつらのために頑張ろうって気になって」と闘志がよみがえった。

 反骨心と友人の存在を励みに、ついに真壁がシングルの頂点に立った。だが、まだ満足していなかった。「次はよ、棚橋、てめえのベルトだよ」。3度目のIWGPヘビー級王座挑戦は、9月27日の神戸大会が濃厚となった。【塩谷正人】