<ノア:東京大会>◇27日◇武道館◇1万7000人

 三沢さんにささげる初防衛だ。故三沢光晴さん(享年46)追悼興行のメーンで行われたGHCヘビー級選手権試合は、三沢さん最後のパートナーで王者の潮崎豪(27)が、三沢さん最後の対戦相手となった挑戦者斎藤彰俊(年齢非公表)を24分42秒、ゴーフラッシャーからの片エビ固めで撃破し、初防衛に成功した。試合後の追悼セレモニーで、三沢さんの入場曲「スパルタンX」が流れる中、天国の三沢さんに勝利を報告した。

 三沢さんの等身大の遺影が見守るリングで、潮崎に不屈の三沢魂が乗り移った。斎藤の執拗(しつよう)な右腕への攻撃、ひざ蹴り、そして岩石落とし2発を耐え抜いて反撃。三沢さんの技、ローリングエルボー、エメラルドフロージョンでたたみかけ、最後は必殺のゴーフラッシャーで斎藤を沈めた。試合後は「気持ちのどこかに三沢さんがいた。なんか心強かった」と感極まり、涙を浮かべた。

 昨年は約1年の米国武者修行を経験し、2個のタイトルを獲得。同9月には世界最大のプロレス団体WWEからスカウトされた。だが、日本テレビの地上波中継が同3月で終わることを聞き、「団体のため、ノアで戦う」と決断。帰国後は三沢さんの期待も大きく、今春のグローバルタッグリーグ戦のパートナーに抜てきされ、優勝を飾った。

 初のGHCヘビー級王座獲得は、三沢さんが亡くなった翌日の6月14日。負傷により王座返上した秋山から、力皇猛との王座決定戦の相手に指名された。それだけに「三沢さんに導かれたベルト。今日は追悼興行にふさわしい相手」と、因縁の斎藤を撃破した。

 三沢さんのリーダーシップにあこがれた。今年4月、当時同級王者秋山への挑戦に向け、コスチュームを新調。モチーフとしたのは人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の主人公空条承太郎(くうじょう・じょうたろう)だった。潮崎は「リーダーシップがあるキャラクター。おれも団体を背負うという意味で新調した」と、この日もそのコスチュームで入場した。

 仲田龍相談役は「三沢社長はもっと手取り足取り教えたかったと思う。それは志半ばだった」としみじみ話した。だが、この日の日本武道館の大歓声が、新エースの存在を認めた証しだった。「3カウントを天国に届けたかった」。三沢さんも、愛弟子潮崎の成長に目を細めているに違いない。【塩谷正人】