<DREAM14>◇29日◇埼玉・さいたまスーパーアリーナ◇観衆1万2712人

 キャリア3連敗中だった山本“KID”徳郁(33=KRAZY

 BEE)がKO劇で完全復活を証明した。フェザー級(60キロ契約)でキコ・ロペス(26=米国)と対戦し、右フックからのパウンド攻撃で1回1分41秒、KO勝利を挙げた。07年大みそかのハニ・ヤヒーラ戦の2回KO勝ち以来、880日ぶりの白星を飾った。初セコンドについた父郁栄氏(65)の再婚に花も添え、再びDREAMマットで“神の子”が輝きを取り戻した。

 興奮のボルテージが頂点に達した。近づくテレビカメラのレンズに、山本が熱くキスした。会場から880日ぶりの勝利を祝福する大歓声を受けると「久々にみんなのそれを聞きたかった。これでぐっすり寝られるわ~」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 右フックがさく裂した。向かってきたロペスの左顔面にヒット。背を向けて倒れ込んだ敵の顔面に左拳を3連発。1回1分41秒のKO勝利を挙げた。10年1月、父郁栄氏の人脈からボクシング元WBA世界スーパーライト級王者平仲明信氏(46)と沖縄で会食。「話を聞いて違うぞ、と思った。翌日には平仲さんに電話を入れた」(山本)。3カ月間で3度も東京-沖縄間を往復して計6週間、ボクサーとのスパーリングなどを消化。山本は「平仲さんに『その右フックならば誰でも倒せる』と言われたことを信じて出した。相手パンチが遅く見えた」と自らの成長を確信した。

 郁栄氏の4月再婚にも花を添えた。都内で結婚パーティーを開いて祝福したが「勝って喜ばせたい」と意気込んでいた。山本は「(父が)チョー喜んでいた。60キロ(級)をつくってもらうとちょっと長く続けられるのに」と新階級設立も熱望。勝利が似合うオーラを漂わせた。【藤中栄二】