WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志(30=ワタナベ)がサプライズ乱入した挑戦者の奇襲をメンチ切りでかわした。14日、20日の2度目の防衛戦(さいたまコミュニティアリーナ)に向け都内ジムで練習を公開。その開始直前、同ジムの他フロアで練習予定だった挑戦者の同級5位ムクリス(インドネシア)がいきなり会見場に現れた。

 和やかに談笑していた内山の表情が、目に見えて硬くなった。神経質になる世界戦前は、両者出席の公式行事以外では両選手は顔を合わせないもの。だからこそ挑戦者陣営は「意表を突くパンチって効くんですよ」と動揺を誘おうとし、内山も一瞬「会いたくなかった」と相手の思惑通りになりかけた。だが、その後が冷静だった。「へらへらしていられない。勝つと負けるとでは天国と地獄になるんですから」。温和な王者には珍しく視線を鋭くし、握手はしても目は合わさず戦闘モードを崩さなかった。

 その後の2回のスパーも軽めで、手の内は見せなかった。「勝てればいい。KOか判定かはこだわってません」と話しつつも「相手を見ると『倒さないと』って気持ちが入りますね」と不敵に笑った。日本ジム所属世界王者で歴代2位のKO率80%を誇る愛称「KOダイナマイト」の闘志に、思わぬ形で火が付いた。【浜本卓也】