ワタナベジムの渡辺均会長(60)がダブル世界戦全勝のために「リング縮小」の秘策を打った。20日、WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志(30)が2度目の防衛戦に、河野公平(29、いずれもワタナベ)はWBC世界スーパーフライ級王座決定戦に臨む。渡辺会長はファイター型河野の王座奪取のため、リングを内山の前回世界戦より1辺を60センチ短くすると決断し内山も快諾。日本初の同一ジム選手のダブル世界戦全勝に執念を見せた。19日に都内で行われた前日計量は内山が58・9キロ、河野が52・1キロでクリアした。

 愛弟子2人の勝利のため、渡辺会長が執念の一手をひねり出した。渡辺会長は「河野は突っ込んでいくタイプで相手はすごく動く。だから、後楽園ホールと同じリング幅の、ルール上ギリギリの小さいリングでやります」と「小型リング」採用を決定。ルールは「ロープの内側は原則として18フィート(5・47メートル)平方以上24フィート(7・31メートル)平方以内」となっており問題なし。5月の内山の初防衛戦より、一辺(6・1メートル)を60センチも短くして5・5メートルとなる。

 たかが60センチだが、これが侮れない。リング内の面積は前回より約4畳分も減少。内山と河野はともに攻撃が売りで、相手が足を使う河野のためだけでなく、強打が自慢の内山も相手をより追い込みやすくなる。この「秘策」に河野は「その方がやりやすいですね」と喜び、内山も「僕も大丈夫です」と歓迎。渡辺会長は「追いかけて、追い詰める。その方が(ジャッジへの)イメージもいいしね」と多くの効果を期待した。

 そんな渡辺会長の執念は、2人にも伝わっている。この日の調印式では、そろって「会長への恩返し」という言葉を口にした。

 内山

 自分がもちろん勝たなきゃいけないけど、公平も勝って(自分の)WBAとWBCのベルトがあれば会長への恩返しになる。

 河野

 尊敬する内山さんとできるのはうれしい。僕がWBCのベルトを取れば会長への恩返しになる。なんとしても取りたい。

 渡辺会長は「『恩返し』だなんて、うれしいね」と目尻を下げた後、「あとは試合だけだね」と表情を引き締めた。これまで日本の同一ジム所属選手がダブル世界戦をして、両者が勝ったことはない。それでも「内山はジム史上ナンバーワンの選手。河野もタイトルを奪取してくれると思う」と言い切った。人事を尽くして天命を待つ-。ワタナベジムの期待と信頼を背負った2人が20日、「小型リング」で躍動し、歴史の1ページを塗り替える。【浜本卓也】