WBC世界スーパーバンタム級王者西岡利晃(34=帝拳)が、異例の「KO狙うな」指令を受けた。同級1位レンドール・ムンロー(30=英国)との5度目の防衛戦(24日、東京・両国国技館)に向けて16日、都内で練習を公開。約10年ぶりのサウスポー対決に備えて強化した右パンチの進化を随所に見せた。初防衛戦から4連続KOの日本記録を樹立した左強打は「警戒される」という理由で、帝拳プロモーションの浜田剛史代表(49=元WBC世界スーパーライト級王者)からKOを狙わないように指示されるなど、余裕の仕上がりを見せた。

 KO宣言やKO指令はよくあるが、浜田代表が西岡に出した指令は、まったく逆だった。会見で初防衛戦から4連続KO防衛の日本記録を持つ愛弟子に「お客さんもKOを期待している。立場として応えないといけないのはあるが、KOは狙わない方がいい」と、異例の指令を発動した。

 一撃必倒の左強打でKO防衛を続けていることから浜田代表は「左は研究されている。簡単に当たらないだろうし、KOを狙おうとすると空振りする」と予測。一方で「打つなって言っても決めるときは自然に左は出るもの」とも話した。西岡が力みすぎず、自然体でリングに立てるように導く指示でもあった。

 最強の左を温存させられるほど、右パンチに磨きがかかった。約10年ぶりのサウスポー同士の対戦に、西岡は「右のリードブローが鍵になる」と分析。112回のスパーリングもすべて左とこなした。この日の公開スパーリングでも、サウスポーの相手をほぼ右手一本で圧倒した。浜田代表は「今回は左同士だから『右を制する者は世界を制する』。距離を測る右、攻める右、左につなぐ右を打てるようになった」。西岡も「完ぺきに近い」と、右強化の手応えを口にした。

 浜田代表は「KOを狙わない状態で臨めば、結果はKOになるんですよ」と笑顔で真意を説明した。その言葉に、西岡も「その通りだと思っています」と意図を理解し、うなずいていた。【浜本卓也】