アジアの英雄マニー・パッキャオ(31=フィリピン)が、史上2人目の6階級制覇を達成した。元WBA世界ウエルター級王者アントニオ・マルガリート(32=メキシコ)に3-0の大差判定勝ちを収め、オスカー・デラホーヤ(米国)以来、史上2人目の快挙を成し遂げた。しかも、初戴冠のフライ級(リミット50・8キロ)から10階級上のスーパーウエルター級(同69・85キロ)を制するという、ボクシング界の常識を覆す偉業だった。

 パッキャオの10階級をまたいでの6階級制覇に、国際マッチメーカーの小泉氏は「これまでの経験や常識が崩されました」と苦笑いした。それほどの偉業をパッキャオはなぜ達成できたのか。小泉氏は「転級に対する考え方」を要因に挙げた。階級を上げる時には、パワーアップなどの増量の利点を意識するのが常識。だがパッキャオは違った。小泉氏は「パッキャオはスピードを保持したまま体をつくっている。だから相手に打たせずに打てる」と説明した。この試合もパッキャオは「スピードが落ちる」という理由で、1階級下の体重で前日計量をパスしていた。

 元WBA、WBCミニマム級王者の大橋秀行会長は「フライ級時代からパンチ力はすごかった」と前置きした上で技術の高さに着目。「筋力は持って生まれたものだが、スピードを持続させるのはトレーニングしかない。階級を上げるごとに、いきなり左ストレートを打つなどサウスポーの利点を生かすうまさが出てきた」と話した。心・技・体すべてで、パッキャオは規格外だった。