WBC世界スーパーフェザー級王者・粟生隆寛(27=帝拳)が、減量ミスの挑戦者に怒った。トリプル世界戦は今日8日、神戸ワールド記念ホールで開催される。7日、神戸市内で前日計量が行われ、初防衛戦に臨む粟生は58・9キロのリミットで一発クリアしたが、挑戦者の同級3位ウンベルト・グチェレス(22=メキシコ)は500グラムもオーバー。頭髪までそって臨んだ3度目の計量で辛うじてパスし、タイトル戦は成立したが、プロ失格ともいえる元暫定王者の失態に、粟生は「お仕置きしてやります」と宣言した。

 怒りを通り越した。先に計量を一発パスした粟生は余裕の笑みでグチェレスの様子をうかがった。全裸で両手を上げ、そっと体重計に乗る挑戦者に「飛び込みかよ。どんだけうまく着水したいねん」と冗談を飛ばしたが、その直後、笑えない状況が待っていた。予想外となる500グラムオーバーが発覚。ふだんは温厚な王者が怒りの言葉を発した。

 粟生

 しょせんは元暫定王者ですね。自覚が足りない。対戦相手の体重オーバーは初めて。自分もアマチュアから100回以上の計量をしてきましたが、1度もオーバーはありません。負けませんよ。

 怒り心頭の粟生を横目に、2時間猶予を与えられたグチェレスはウオーキングで汗を流し、1時間10分後に200グラムオーバーまで落とした。さらに「髪がぬれて重く感じた」(グチェレス)と丸刈りにして制限時間残り15分でリミットに到達。持参した体重計ではリミットだったことを強調しつつも、22歳の挑戦者は「自分の体重計を信じていた。すみません」と低姿勢で謝罪した。

 減量失敗の時点で、粟生の初防衛が決まるところだった。日本ボクシングコミッション安河内剛事務局長(50)は「日本の世界戦で挑戦者が減量失敗した例はない。挑戦者がパスしなくてもWBCの承認はあるのでタイトル戦は成立する。勝っても負けても粟生選手の防衛でした」と明かす。日本人王者3人による初のトリプル防衛戦に水を差す可能性もあった。戦わずして勝つことは本意ではなかっただけに、計量パスの一報を受けた粟生は安堵(あんど)したという。

 試合成立後、粟生は「丸刈りだけじゃ済ましません。明日はもっとひどいお仕置きをしてやります」と関係者を通じてコメント。精神的に優位に立った粟生が格の違いをみせつける。【藤中栄二】