<プロボクシング:WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇7日◇大阪府立体育館

 WBA世界バンタム級王者の亀田興毅(24=亀田)が、力のボクシングで自身初の世界戦KO勝利で初防衛に成功した。同級14位ダニエル・ディアス(27=ニカラグア)に対し、本来のスピードを生かしたスタイルを封印。至近距離に飛び込んで左拳を打ち込んだ。8回に左フックでダウンを奪い、連打でダウン寸前に追い込んだ11回終了後にレフェリーストップによるTKO勝ちを収めた。地元大阪での初の世界戦を勝利で飾り、東日本大震災で苦しむ被災者へKO防衛をささげた。興毅の戦績は25勝(16KO)1敗となった。

 おのれのスタイルを捨てた。興毅が強引に左拳を振った。身長で7・9センチも上回る敵の顔面に力いっぱいの左フックを浴びせた。足と速さを生かしてカウンターを狙うのではなく、1歩、前に踏み込んだ。リーチ9センチ差のハンディを埋めるように至近距離で両拳をめり込ませた。8回に左フックでダウンを奪取。11回は連打、連打で追い詰め、11回終了時にレフェリーストップ。狙った自身初の世界戦KO勝利で初防衛。故郷大阪に錦を飾った。

 序盤に拳を合わせた瞬間、興毅は「スピードで普通に12回やれば勝てる」と感じた。しかし、その戦いは選択せず、力任せに1発1発、打ち込んだ。「東日本大震災で東日本が落ち込んだ。ちょっとでも被災地に力を送れるようにと。KOせなあかんし力んだ。でも力んでも倒そうと思った」。

 東日本大震災発生時、合宿先のフィリピンから帰国して高速道路の車中にいた。大きく揺れた時、埋もれていたトラウマを思い出した。95年の阪神・淡路大震災を大阪市内で体験した。高速道路が割れた映像が記憶に残っていた。「あの時の道路が割れた時を思いだして怖かった。だから何か力になりたかった」。ディアス戦の両拳には、そんな思いも詰まっていた。

 ディアスは1年以上もブランクがある世界14位の格下。力の差を見せつけて、勝たなければならない相手でもあった。その挑戦者をアゴ骨折の疑いで病院送りにし、「『亀田とKOはセット』に戻さなあかんやろ」と満足顔。今後は本当の意味で3階級制覇の真価が問われる、ランク上位との指名試合や有名選手とのビッグマッチが期待されている。興毅は「オレ自身はあんま防衛に興味はないけど、2~3回はしたいな。ビッグマッチはタイミングさえ合えば」と、新たなステージにステップアップする意欲を示した。【藤中栄二】