スウェーデン人の美人キックボクサーが、仙台の復興に向けて蹴りまくる。09年12月に仙台のドラゴンジムからプロデビューしたモニカ(24)が15日、都内で取材に応じた。漫画家を志して08年秋に来日。東日本大震災が発生した3月11日は、仙台市内の専門学校にいた。その後、福島第1原発の事故も分かり、母国の家族からは帰国を強く求められたが、仙台に残留。被災者を励ますために、キックボクサーとして戦い続けている。

 「スウェーデンには地震がないので、あんなに大きな揺れは初めて。パニックになりましたけど、日本の友人を見捨てて帰りたくなかった」。

 仙台市若林区のジムは被害が少なく、翌12日からもいつも通りに練習した。しかし、ジムには石巻市内で被災した仲間も多く、家のがれきを撤去するなどの手伝いを続けた。「行方不明だった仲間に会いたかった。スウェーデンに戻ったら、自分のことが許せなくなると思った」。

 スウェーデンは、電力の約半分を原子力に依存。放射線の危険性も熟知し、震災直後に福島第1原発から半径80キロ圏からの退去勧告をスウェーデン人に出した。仙台から同原発までは約100キロの距離があるが、母国では、日本全体が放射能に汚染されるかのように報じられていた。「親からは『50歳になったら、がんで死ぬ』と言われましたけど、やりたいことをやれたら、死んでもいいんです」。悲壮な決意をさらりと話した。

 毎日約3時間半の練習、約7キロのランニングを続け、キックボクシングの通算成績は7勝1敗1分け。将来は母国で自分の漫画を発表するという夢も持つ。「被災者の皆さんをキックボクシングで元気にしたいし、漫画でも楽しんでもらいたい。自分の限界は分かりませんから、頑張ります」と力を込めた。【柴田寛人】

 ◆アルフレッドソン・モニカ・アンナ・アグネイタ

 1986年7月13日、スウェーデン生まれ。08年秋に来日。ムエタイを始めていた当時交際中の男性との時間を増やすため、ドラゴンジム入門。プロ4戦目の66キロ級タイトルマッチでKO勝ちし、世界王者。昨年4月に専門学校「デジタルアーツ仙台」まんがアニメ科入学。今年2月、石ノ森萬画館(宮城・石巻)年間優秀賞を受賞した。184センチ。血液型A。