厚生労働省の職員がプロボクシングのレフェリーを兼業していた疑いが23日、浮上した。同省東京労務局の45歳の男性職員で、長年にわたり偽名を使ってレフェリーをしているとの情報があり、厚労省は、兼業が原則禁止の国家公務員法に抵触する可能性があるとみて、調査している。

 複数の日本ボクシングコミッション(JBC)関係者や内部資料によると、この男性職員は1996年(平8)12月にJBCの審判員ライセンスを取得。本名と違う「山田一公」を名乗り、今年も日本タイトルマッチなどでレフェリーやジャッジを務めていた。現在は最上級のA級ライセンスを取得していたという。

 厚労省大臣官房地方課によると、同省は先週に「レフェリーの山田一公氏が厚労省の職員ではないか」という情報を入手し、現在は東京労務局で労働基準監督官を務める45歳の男性職員と、この審判が同一人物か確認中。関係者によると、疑惑の発覚したここ数日にJBCの管理していた男性のデータが大幅に書き換えられ、履歴書が紛失したという。

 また、男性は疑惑浮上直前の今月17日にJBCの審判員を依願退職したことも分かった。この日、取材に応じた森田健事務局長代行は「辞めたと今日聞いた。理由は聞いていない」と話すにとどめた。

 プロボクシングのレフェリーは、日本タイトルマッチで約2万円の報酬を得る。JBC関係者によると、この男性も長年にわたり報酬を受けていたとみられ、兼業が原則禁止の国家公務員法に触れる可能性が高い。国家公務員の兼業は所轄庁の長が許可した場合のみ可能だが、アパートなどの不動産物件を親から引き継いだケースがほとんど。同課では「レフェリーは聞いたことがない。申請しても許可基準を満たさないのでは。事実なら当然処分が考えられる」と話した。